人にも地球にも優しい製品を作りたいと、15年に「ぬくぐるみ工房」を始めた濱津雅子さん。好きとこだわりが詰まった天然素材の動物のぬいぐるみが共感を呼んでいます。
小規模ならでは
オーガニックコットン100%の生地を使い、触り心地が良く、優しい笑顔と愛くるしい形が特徴です。熊、パンダ、虎、ウサギ、猫、犬、ネズミなどのぬいぐるみを、雑貨店などに卸売りし、自社ECや催事で販売しています。縫い糸、刺繍糸、中わたなどの付属まで全てオーガニックコットンです。
濱津さんは、それ以前、アパレルメーカーや衣装制作の企業に14年半勤務。洋服に限らず、着ぐるみなど多種多様なパターンメイキング、縫製、生産に携わりました。その経験を生かし、パターンと形状にこだわっています。「子供がぬいぐるみを手にして抱いた時に、癒やされる形はどんなだろう。前後左右、底から見ても可愛い形はどんなだろう」と納得いく形になるまで、何度も何度も試作を重ねます。
パターン数をなるべく少なくして、縫う工程を減らし、同時に立体感のある形状を出す工夫をします。作業の効率化とともに生地の無駄を減らすため、抜き型の裁断も併用します。自社製品に合った大きさの裁断機を特注しました。外注を試みましたが、思うような仕上がりにならず、一人でできる規模で行っているそうです。
生地や資材の仕入れ先の開拓には時間がかかりました。中でも苦労したのが刺繍糸です。大正紡績から仕入れたオーガニックコットンの単糸を使い、生地と糸の草木染は京都の工房、手染メ屋に依頼します。刺繍に適した撚りの糸の手配が難しかったため、撚糸機を購入して糸から製作するなど、物作りに投資してきました。
伝えることも大事
伝えることにも熱心です。製品化する動物の状況や生育環境など、疑問に思ったことは自身が納得いくまで調べ、質問にできる限り答えられるようにしています。自分が感じている商品の可愛らしさや価格の理由など出来る限りの説明をします。
「分かる人が分かればいい、ではお客様に失礼だと思う」と濱津さん。ホームページでも、生産背景や事業への思いを詳細に掲載しています。
じかに見て触れてもらい、思いを伝えることができる催事や展示会も大事な場です。自らの絵と言葉によって、素材や動物を解説するパネルを用意して参加します。催事は百貨店やクリエイターのイベントに加え、「いきものフェス」「いきもにあ」といった生き物をテーマにしたイベントに出店。動物好きの来場者や出展者と情報交換できることも楽しいそう。
「自分が好きなものを作って販売し、それを可愛いねと言ってもらい、購入してもらって本当にありがたいです」と濱津さん。子供の頃からミシンが大好きで洋服や小物作りを楽しみ、仕事にしてきたこと、動物が好きで生育環境や環境保護にも関心があることが、現在の事業につながりました。小規模だからこそ実現できたこだわりが詰まっています。
(ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵)
■おざわ・めぐみ
デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。