【ファッションとサステイナビリティー】ファッション・フロンティア・プログラム1期の受賞者に聞く

2022/07/28 05:30 更新


井口さん、本田さん、和田さん(左から)

 ファッションデザイナーの中里唯馬さんが発起人となり、ユニステップスが運営するファッションデザインのアワード「ファッション・フロンティア・プログラム」(FFP)が21年に立ち上がった。ソーシャルレスポンシビリティー(社会的責任)とクリエイティビティー(創造性)を併せ持つ衣服をデザインすることがFFPの最大の特徴。素材メーカーや専門機関、様々なジャンルの専門家からアドバイスやサポートを受け、作品を仕上げた。審査員は、国立環境研究所・生物多様性領域室長の五箇公一さん、建築家の妹島和世さん、中里さん、慶応大学医学部教授の宮田裕章さん、宇宙飛行士の山崎直子さん、『ヴォーグジャパン』編集長(当時)の渡辺三津子さんが務めた。グランプリを受賞したのは当時高校2年生だった本田琉碧さん、準グランプリに当たるランナーアップにはアパレル業界で働く井口貴仁さんとグラフィックデザイナーの和田由里子さんが選ばれた。3人にFFPで得た学びや今後の夢を聞いた。

 ――FFPに応募した動機は。

 本田 これまでに独学で服を100着くらい作ってきました。当時高校2年生で、進路を考え始めていたとき。ファッションデザイナーになりたいと思っていて、ここで得た知識や人脈が後々に役立つのではないかと思い、応募しました。

 井口 小さい頃から服が好きで専門学校を出ているのですが、もう一度勉強したいと思って「ここのがっこう」にも通いました。FFPはファッションだけでなく、様々なジャンルの審査員に見てもらえることに興味を持ちました。

 和田 印刷やパッケージの業界もファッション業界と共通する廃棄などの問題があります。両方の業界をまたいで課題をシェアできればと思い、応募しました。学生時代に舞台の特殊造形を手掛けたことはありますが、服作りは初めてでした。

 ――印象的だった講義やアドバイスは

 本田 約3カ月、学ぶ期間がありました。建築家や宇宙飛行士など他の業種のプロフェッショナルによる美やファッションについて講義は、すごく新鮮でためになりました。環境問題やアニマルライツ、途上国の労働環境、染色による汚染などの問題を知る一方で、リンゴやパイナップルから作るフェイクレザーやNFT(非代替性トークン)ファッションなど、ファッションの未来の可能性を感じました。ファッションは人を豊かにすると同時に、社会問題に答える力があると気付きました。

 井口 これまでは全部自分で作ってきたのですが、もっとクオリティーを上げるために工場に頼もうかと思っていました。プロフェッショナルからアドバイスを受ける中で、本当にそれが正解なのかの答えは見つかりませんが、考えを深めるきっかけになりました。

 和田 業界が違うので、布や革などの素材の背景や、海外の物作りにおける課題を知ることができたのが新鮮でした。

 ――制作した作品について。

 本田 「ファッションを通じて学生生活をよりよくする制服」をタイトルに作りました。制服は公平でありながら、同時に個性を殺すと思っています。近年ジェンダーレスの制服が出てきていますが、本質的な解決策になっていません。

 ジャケットは、女子高生のアイコン的な服でありながら、元は水兵の軍服という両性的なアイテムのセーラー服をベースに作りました。パンツはルドベキアという花からインスピレーションを得ました。ルドベキアは、あなたらしく、誠意、公平という花言葉があります。ウエストは50センチから110センチまで伸び、スカートへとトランスフォームも可能です。素材は生分解される天然素材で、無染色のウールを使用しました。自分が今作れるベストの物ができました。

グランプリを受賞した本田さんの作品

 井口 服から出た糸くずからもう一度新しい服を作るというコンセプトで作りました。糸くずを1本1本結んで作った長い糸で、ニットとスカートを作りました。糸くずを使うことでサステイナブルと言われますが、その点は意識し過ぎないようにしました。

井口さんの作品

 和田 印刷の業界では一定期間が経つと大量の印刷物が役割を終えていきますが、そのまま廃棄されるのはもったいないと思っていました。紙を1枚1枚貼り合わせて作ったビーズのような紙の塊と、ファッション業界で廃棄される糸から作ったひもを結び付けて作りました。お互いの領域の廃棄素材を結び付けることで、それぞれの領域で廃棄について考えてもらえたらと思います。

和田さんの作品

 ――今後の活動予定や夢は。

 本田 大学で哲学や美学などを学んだり、専門学校で専門的な技術を学びデザインのフィルターを厚くしていきたいです。

 井口 これからも服を作りながら、自分のブランドができたらと思っています。糸くずをどうブランド化していくか、固めていきたいです。

 和田 グラフィックとファッションの世界を横断しながら物作りができたらと思っています。最近はメタバース(仮想空間)やバーチャルな世界ができ、グラフィックデザインの活躍の場も増えたので、実際に物を作らない物作りにも挑戦したいです。

 FFPは22年度も継続して実施する。すでに選考がスタートしており、11月にファイナリストの作品発表や、今年度の受賞者を決定する。21年度に受賞した3人も新たな作品を発表し、競演する。

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