【ファッションとサステイナビリティー】パルグループHDとパル井上財団 和歌山県で「SDGs体験プログラム」

2024/08/26 05:30 更新


 パルグループホールディングス(HD)は8月1、2日、公益財団法人パル井上財団の設立10周年記念イベントとして、服飾を学ぶ専門学校生、大学生を対象に、「SDGs(持続可能な開発目標)体験プログラム」を、同財団と開催した。8校の20人近い学生が参加し、和歌山県白浜町などで、人や地球と自然環境との共存を学んだ。

伝統工芸を体験

 同財団は、学業・人物ともに優秀で経済的理由により就学が困難と見られる日本人学生及び外国人留学生に対し、奨学金の援助を行い、将来のファッション産業や関連する分野に貢献し得る人材育成を目的に運営。18年からはファッションを学ぶ学生を対象にした接客ロールプレイングコンテスト「パル・ファウンデーション・カップ」も開催している。

 今回は、ファッション業界が抱える課題に対し、実体験を通じて学ぶ機会を用意。東京モード学園、文化服装学院、杉野服飾大学、名古屋モード学園、大阪文化服装学院、上田安子服飾専門学校、神戸ファッション専門学校、香蘭女子短期大学から16人が参加した。

 初日はまず、新大阪駅に集合しバスで出発。道中に有田川町の保育所跡を活用した施設を訪れ、施設内にあるアメリカンカフェ「ゴールデンリバー」で昼食をとった。施設内にはゲストハウスもあり、施設を有効活用した地域活性化の取り組みを見た。

 続いて、同町にある「体験交流工房わらし」に移動し、350年以上の歴史を持つ伝統工芸の紀州手漉(す)き和紙「保田紙」を使い、それぞれがうちわ作りを体験した。うちわ作りと併せて、保田紙の魅力や、歴史を学ぶ機会になった。

紀州手漉き和紙「保田紙」を使ってうちわ作りをする学生

 宿泊地は、パルグループのフリーゲート白浜が運営する白浜町の高級旅館「くろしお想」。ここで、食材の宝庫である和歌山県の地産地消の料理を食べるとともに、和歌山の伝統工芸やサステイナブルな素材にこだわった館内設備や備品を利用した。

 夜にはよく見える夜空を目の前に、星空観察ツアーも実施し、自然の魅力を味わった。

木育や農福連携

 2日目は、林業が盛んな田辺市の森林を樹木医と歩き、森や木の状態を学ぶ木育研修をした。木々が葉を通じて光合成することの意味、強い日射に耐えるために蒸散していることなどのレクチャーを受けた。

2日目は田辺市の森林で木育研修をした

 さらに、畑を植え替える時などにやむを得ず伐採された樹木からくりぬいたスプーンを、やすりで磨き、えごま油で仕上げ塗装する作業にも取り組んだ。スプーン作りを通じ、持続可能な循環を身近に感じた。

やむを得ず伐採された樹木からくりぬいたスプーンを仕上げる学生ら

 その後は、フリーゲート白浜が運営する白浜町の複合施設「アサビレッジ」に移動し、カフェで昼食。フリーゲート白浜が障害者を雇用して取り組む農福連携の「スマイルファーム」で栽培したオーガニック野菜を使った料理を食べた。

 プログラムに参加した学生からは、「どれも五感で幸せを感じられた。シンプルに必要なことだけを見つめて生きることで、多くの幸せを感じられ、持続可能な未来になるのではないかと思う」「全ての取り組みが環境、生産者、消費者、地域経済の全てにおいて良い事があり、つながっていると思った。一人ひとりがSDGsを意識し、小さなことからでも取り組んでいくことが大切。今回を機により良い社会につながるような取り組みをしていきたい」などの感想が寄せられた。

 学生たちにとって普段学んでいるファッションとは違う視点から、SDGsを見つめることができる貴重な機会になった。ファッション産業の明るい未来に向けて、今後も同様のプログラムを定期的に継続開催していく考えだ。

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(繊研新聞本紙24年8月26日付)

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