産地のテキスタイルをアートに――インテリア向けが主力のフジエテキスタイル(東京)はグラフィックデザイナーの小林一毅氏と作品を作り、販売を始めた。作品は小林氏が子供と過ごす日常の風景を書き起こした図案を基に、京都の職人がプリントした。東京・清澄白河の家具店「ギャラリーストゥープ」で展示販売会も開いている。
構想は約3年前から。「日本には多様な産地があり、様々な技法で色々なテキスタイルを作れる。それらをアートピースにできないかと考えたのが始まり」と室脇崇宏取締役兼企画開発部部長兼クリエイティブディレクターは振り返る。当時、小林氏がギャラリーストゥープから「テキスタイルを使って空間の中にアートを作りたい」と相談を受けていたことも重なり、協業に向けて動き始めた。
高い高いした時の子供の笑い声やコンクリート片を石として手渡された経験、子供が初めてはさみをもった時の記憶。5歳になる子供と過ごす日々を、綿・麻の生成りキャンバスに曲線や直線、様々な形の抽象的なモチーフで描いた。京都の職人が一点一点プリントし、モチーフを強調して作品を印象付けるため、黒箔(くろはく)を使ったという。22点作り、ギャラリーストゥープ限定で大きいサイズも用意した。

作品はもう一種類ある。風が吹いて葉や草がたなびく様を滑らかな曲線で表現したタイプだ。楕円(だえん)のフォルムで、布を部分的に薬剤で収縮させ、彫刻のような立体感を出した。京都で作った。


小林氏は「布は伸縮したり、縮絨して形を変える。プリントしてみないと作品の仕上がりを予測することが難しい面白さがある」と話す。展示販売会では店で販売するビンテージ家具なども合わせて空間を作った。7月7日まで。