ジャパンビンテージと言われる野良着やぼろを専門的に販売し、小さいながらも強烈な個性を放つ店がある。JR福島駅から徒歩十数分の場所にあるファンズだ。
売り上げの大半をECが占める。地方都市の中心市街地から離れた立地で、極めてニッチなカテゴリーだけに、実店舗での販売だけでは難しい。最初からウェブを通じて〝グローバルニッチ〟な市場を狙い、少しずつ顧客を増やしている。
(小堀真嗣)
明治、大正の品々
品揃えは古い物で明治、大正時代、新しい物でも60~70年前に使われていた野良着やぼろの数々だ。店主の難波太さんが足を使って地道に集めた希少な品々を実店舗ではもちろん、ウェブサイトやインスタグラムでも日本語、英語を使い分け、一つひとつ丁寧に説明しながら売っている。
実店舗の客数は1日当たり2、3人。一方、ウェブサイトには国内外から1日当たり約1500人が訪問し、インスタグラムのフォロワーは約1600人いる。購入客は世代、性別、国籍を問わない。
野良着とぼろの販売と聞くと、昔ながらの骨董品店がイメージされるが、ファンズは白を基調としたクリーンな内装の店内に、約100点の商品が整然と並ぶ。難波さんは野良着やぼろの希少価値を認めながらも、日本のワークウェアとして使われてきた実用性やファッションとして楽しめる価値を、洋服とのコーディネート画像などを通して提案している。
一般家庭から買い取り
ファンズは15年にオープン。元々は欧米のビンテージ古着を販売する店だった。「欧米の古着は今も好き。でも、そんな品揃えの店はどこにでもあった。他の店がやらないことをやりたくなった」と難波さん。以前から野良着やぼろも好きで身近にあったが、「これから何をやろうか」という心境の中、何気なく行った骨董市で見た野良着やぼろに「『自分が欲しているのはこれか』と強い魅力を感じた」という。
新しい売り物が決まり、16年から野良着とぼろを主体にした店に転換した。品揃えのために向かった先は骨董市だけではない。主に東北地方の一般家庭も訪問して買い取っている。
時には持ち主からお茶を振る舞われ、譲り受けた物が、どのような人物に、どのように使われていたのかを聞くこともある。
野良着やぼろは基本的に一点物。防寒や補強のために施す刺し子や、縫い合わせる布の組み合わせパターンは多彩だ。持ち主の個性や暮らし方、使い方によって一つひとつディテールが異なるからだ。そのユニークさが魅力で、難波さんや顧客の心をつかんでいる。