セレクトショップ「オンザアース」を運営するクレセントグース(仙台市)は自社ブランド「ティージー・オーセンティック・クラシック」(以下、ティージー)の25年秋冬物で、価格を維持・据え置きする戦略を取ることで、卸先での持続的な売り上げ確保を目指す。コスト高騰に単なる値上げで対応していては、顧客離れを招く恐れがあるため、これまで以上に国内工場との連携を強め、新たなアイテムの開発で工場の閑散期を埋めるなど、生産性向上によるコスト低減も追求する。
(大竹清臣)
協力工場とチーム
ティージーは、綿スラブ糸を使ったボートネックのカットソートップが中心で編み立て、染色、縫製の全工程を日本で行う。小規模ながら全体がチームとなり、工程ごとにリスク分散することで、年間定番品として小ロット・安定供給を可能にした。最大の強みである期中の追加生産もフォロー体制を確立している。
定番品のボートネックは税抜き1万800円という価格設定を維持するため、取り組み先の縫製工場の安定生産に貢献する。25年秋冬物から定番品を生産する工場で、新たにフリースを使ったアイテムの生産を始める。全体の生産数量を増やすことで生産効率も高まるため、ベストで1万3000円、ハーフジップのプルオーバーで1万4000円、ボアの羽織りタイプで1万9000円など手に取りやすい価格が実現する。
新アイテムとして、ボートネックで使用する綿スラブ糸ジャージーのペットウェア(犬用)も開発した。編み立て、縫製ともに定番品と同じ工場を使うことで、全体のロットも大きくなる。飼い主はペットと揃いのウェアを着られて満足度が高まる。小型犬用で6000円、大型犬用で8000円。
卸先の意見大切に
地元のブランド「タタミゼ」と共同企画のコート「ホーリーダッフル」は、これまでOEM(相手先ブランドによる生産)企業に依頼していた生産を自社での生産管理に切り替え、仙台市内で縫製することで、コストを大幅に低減させることができた。昨年まで13万円台だったダッフルコートを8万円台に値下げした。
ティージーの展示会を25年秋冬物から、東京での合同展から単独展に切り替え、新規開拓より既存の卸先との取り組みを優先するようにした。卸先とともに作り上げるブランドとして、バイヤーの意見を反映し、企画のアップデートに力を入れている。細かい仕様やデザインの修正なども迅速に行う。気候変動による残暑や暖冬対策として、薄手のボーダー柄で半袖と長袖を充実した。販売価格の維持も卸先の意見を重視した結果だ。
こうした積み重ねによって、「日本製のブランドも工場も小売店もウィンウィンの関係で生き残ることができる」(大西芳紀代表)と強調する。