アートを活用したマーケティング支援事業などを行うHARTi(ハーティ、東京、吉田勇也代表取締役)は、商業施設向けにNFT(ノン・ファンジブル・トークン=非代替性トークン)導入サービス事業を開始した。
NFTを活用した商業施設への新規集客、既存顧客のファンコミュニティー化をワンストップで支援するサービスとして、11月に都内で複数の大手商業施設で実証実験を開始する。大手商業施設とのパートナーシップ連携を通じて、館内展示作品のNFTやファントークンの販売・配布を実施して集客や既存顧客維持施策の投資対効果の最大化を推進するとともに、NFT技術の小売業界での実用化を目指す。
ハーティは、「商業施設のビジネスモデルは、賃料収入と売り上げからの手数料が主だったため、商業施設の成功にはMDと店舗立地が重要な指標になっていた。そのためリアル店舗ならではの特徴的な体験やコミュニティーといった施策はあまり注目されず、結果としてコロナ下では新規顧客の集客に奔走し、既存顧客の囲い込みに課題が残っている。加えて、集客のために短期的なイベントを実施するが、効果測定できず、施設全体への収益やブランドイメージへのインパクトも測定されていないケースが多い。企画は恒常的に赤字になっているケースも少なくなく、イベント・集客施策のコスト最適化に課題がある」と見る。
商業施設のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む一方で、依然として顧客管理はアナログで実施していることから、業務の非効率も課題となっている。デジタル技術を活用して顧客管理や顧客満足の向上を実現することが求められていることから、商業施設向けのNFT導入サービス事業を開始することにした。
同社はアートによる情報提供(アートIP)を活用したマーケティング企画立案や設計・コンサルティングを行っており、今春、アートを活用したマーケティング支援事業「ハーティ・フォー・ビジネス」の提供を開始した。
今回の商業施設向けはその一環で、商業施設へのNFTの導入で、施設と顧客(施設のファン)の新しい関係やつながりを構築し、高めることが可能という。NFTやファントークンの設計は既存のファンクラブ、クラウドファンディング、オンラインサロンのそれぞれの良い機能を掛け合わせた技術で、欧米では「ファンエンゲージメント」の領域で多くの成功事例があるという。
同社はNFTの保有者向けの認証制コミュニティーサービスの開発を進めており、トークン保有者に向けた、商業施設での限定イベントの実施や、アプリを通じた館内商品の事前購入権などの機能の実装を予定している。
コロナ禍で都心型の商業施設ではテナント離れが進み、集客のためのコンテンツが不足しているため、NFT販売を通じた顧客接点の構築に興味を見せるところも少なくない。ポイントカードやアプリだけに頼る顧客管理施策に限界を感じており、革新的なサービスとしてNFTマーケティングに期待を寄せる声が高まっているという。