メディア開発・運営のアルティコ(東京)が企画し、20年春から販売するスポーツウェア「ヒアネス」が、小規模ながらも着実にユーザーを増やしている。物作りの知見、ノウハウはほぼゼロからのスタートとなったが、メディア開発で培ったクリエイティブなコンテンツ製作のノウハウを生かした〝伝える力〟が強みになった。
立ち上げのきっかけはスポーツに関する自社メディア「オン・ユア・マーク」の製作。スポーツのウェアやギアの知見が広がるなか、「『自分たちならこんなウェアを着たい』という気持ちが膨らんでいった」(マーケティングディレクターの神谷颯人さん)という。
主力商品はメリノウール100%の「スムースウールTシャツ」(税込み9900円)や、サトウキビ由来の原料を使ったストレッチポリエステルの「シュガーケーンショーツ」(1万2000円)、リサイクルポリエステルを使った軽量なキャップ「フォーカスキャップ」(6600円)など。スポーツブランドではあまり見られないモノトーンや淡色のラインナップで、ややオーバーサイズ気味のゆるいスタイリングが特徴だ。
特にこだわったのは着心地。そのこだわりを体現した第1弾の商品がスムースウールTシャツ。神谷さんは海外アウトドアブランドのウールTシャツを普段のランニングで着用し、ウールの吸湿性や、細繊度の梳毛糸の滑らかな質感を肌で感じていた。ヒアネスでもその心地良さを形にしたかった。
インターネット検索で高品質なウール生地で知られる尾州産地に行き着き、現地に向かうと「懇切丁寧に相談に乗ってくれた」という。採用した糸は繊度が17.5ミクロンのニュージーランド産ノンミュールシングウールを使った60番単糸。それでスムースを編み立て、国内で縫製した。糸は防縮加工済みでイージーケア性を備える上、肌に直接身に着けられるようにチクチクとした触感を抑えている。
販促はSNSを軸にしたウェブ広告を仕掛け、成果に結び付けてきた。洗練されたビジュアルやコピーで「一つひとつのコンテンツをちゃんとした読み物として作り込んだ」ことにより、商品はもちろん、素材の特徴を伝える工夫を凝らした。
一方で「素材が売りなのに、素材感が分からない」ことを課題とし、アパレル、雑貨のショップや飲食店などでの期間限定店を出す機会も増やしてきた。販売数量は着実に増え、主力商品は1型当たり年間でそれぞれ1000枚程度。年内には台東区元浅草のオフィスビル内に実店舗を構える計画だ。