店舗を持たず、全国各地を巡るオーダーシャツ屋「ホーローシャツ」の窪田健吾さんは、オリジナルの先染めチェック織物を開発し、クラウドファンディングを活用して本生産に挑んでいる。5月下旬、クラウドファンディングサイトの「キャンプファイヤー」内でプロジェクトを立ち上げた。目標金額は約1カ月で85万円、本生産(300メートル以上)を目指す。
一般的に小規模事業者にとって、オリジナルの織物を作るのは資金的なハードルが高い。織物の生産工程上、ロットが少ないと1メートル当たりの生地値は高くなる。量産したとしても使い切れないうえ、そのための資金もなかなか調達できない――といった悩みを抱えている。とりわけ、複雑な色柄のチェックを先染め織物で作るのは最もコストがかかるやり方だ。
大手ブランドでさえ、在庫リスクを避けて個性的なデザインの織物を発注するのは珍しい。窪田さんは「小規模事業者ならではの、欲しい素材が手に入りにくいという悩みを解決したい」との思いと、「新しいデザインを生み出すことをみんながやめた時にファッションがつまらなくなる」として、今回のプロジェクトに踏み切った。プロジェクトを達成すれば、「同じ悩みを抱える人たちの背中も押せるのではないか」と考えている。
チェックの設計は、カジハラデザインスタジオ(東京)のテキスタイルデザイナー坂井小夜香さんと平野晶さんの協力を得た。たくさんのアーカイブの中から既視感のある構図や色柄を省き、シャツにした時のバランスにも考慮して、デザインシミュレーションを繰り返した。
たくさんのアーカイブを参考に既視感のないチェックの設計と配色を決めていった(写真はオリジナルのチェック)
生地の生産は、山梨県富士吉田市のオーガニックコットンの織物を主力とする前田源商店に依頼し、試織を済ませた。40番双糸を用いたハリ感のある平織りの生地で、シャツはもちろん、インテリア用途でも仕立て映えする。
本生産の費用に充てる支援メニューは、オリジナル生地を使ったシャツ(2万3000円)をはじめ、ハンカチ(大小セット3500円)、布張りノート(1冊3200円)などを揃えた。オリジナル生地とはいえ、“自分だけのオリジナルという特権”に固執せず、「その生地で何かを作りたい」という人もプロジェクトに関われるよう、生地も売る。1メートル分なら3000円、2メートル分なら5400円。5、10、50メートル分もある。
「生地作りの新しいロールモデルになれば」というのは、カジハラデザインスタジオの坂井さん。チェックの生地をオリジナルで作る場合、コストを抑えるためにプリントで柄を表現するか、ニットを選ぶことが多いそうだ。「だから、かなりぜいたくなチャレンジ。どういう結果になるか期待している」という。
「小規模事業者でもオリジナルの織物を作れるという成功モデルを示したい」と窪田さん