リアルのハンドメイドマーケットイベントを急きょ、オンラインに変えて開催した「エアハンマケ」をきっかけに、「ミンネも発信方法が変わったし、作家さんも変わろうとしている」とGMOペパボの新井正樹執行役員ミンネ事業部部長。作家はミンネ以外にも様々な販路を持つが、新型コロナウイルスの影響で実店舗の卸先やイベントの出店先などいくつかの販路が絶たれたケースは少なくない。その中で、「我々は作家さんが今この時も、これからも活動を継続できるよう工夫していかないといけない」と強調する。
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■二人三脚で作り売る
作家が創作活動を継続できるよう支援することは、コロナの影響が広がる前から力を入れていた。市場動向を見て、出品される物や価格設定、情報発信の方法などについて積極的に助言し、価値を作り、その価値がちゃんと届いて売れるようになるまで二人三脚に努めている。その地道な積み重ねが、良質でユニークな商品と、そういう商品に価値を感じる消費者が集まるマーケットを築いた。
コロナ禍でもその姿勢を貫いている。一つの事例がオンラインでの情報発信をする作家の支援。エアハンマケもその一環だった。「今までは自分が出演するのは恥ずかしいという作家さんが多かったが、今はダイレクトに発信しようとチャレンジする作家さんが増えている」と感じている。
その兆候が見えたのが、エアハンマケでミンネの作家活動アドバイザー、和田まおさんが出演したインスタライブ。「途中から見ているだけじゃなくて、参加してもいいよと呼びかけると、勇気を持って登場してくれる作家さんが出てきた」という。「こういうチャレンジを後押しできるんじゃないか」と考え、ミンネのサイト内にあるコンテンツ「ミンネ学習帖」で、和田さんが「インスタライブの始め方」を紹介し、関心を集めた。
■一つの販路として
ミンネを一つの販路として注目する企業も増えてきた。企業がミンネを評価する点は、1000万人を超えるユーザーの多さと、購入者が書くレビューから見えてくる顧客像。「物作りに関心が高く、理解が深い」(新井部長)と見ており、良質な物には丁寧なレビューが書き込まれるケースが多いという。購入者全体の40%がレビューを書く〝レビュー率〟自体も高く、双方向のコミュニケーションが成り立っており、出品する側としては手応えをつかみやすく、物作りに生かせる。
企業にとっては作家や趣味で物作りをする人もターゲットになる。ミンネでは完成品の販売だけでなく、物作りに使う素材の販売が全体の10%を占める。創作活動の需要を狙った最近の試みでは5月、サクラクレパス(大阪市)の「クーピーマーカー」の記事広告をフルリモートワークで制作。ミンネの人気作家の力も借り、商品の特徴をクリエイティブに表現し、公開して10日間で8万ページビューを超えた。
「素材に関する取り組みはまだやり切れていないが、可能性は大きい」と強調する。ミンネではメーカーが出品する素材を買う動きと、作家が自らセレクトして調達した素材をその作家から買う動きに分けられる。このうち、後者のようにミンネの登録作家の感性を生かした素材の提案については「おそらく次のチャレンジになると思っている」として、メーカーとの協業による市場の活性化にも意欲的に取り組む構えだ。
(繊研新聞本紙20年7月1日付)