14~17日に香港コンベンション&エキシビションセンターで開かれる香港ファッションウィーク(主催は香港貿易発展局)には、日本から6社が出展する。日本の伝統文化や技術・品質を強みに、それぞれの個性を生かした企業が目立つ。ここ数年、日本企業が香港への出店を進めるなど、アジア圏と欧米とをつなげるファションビジネスのハブとして注目される香港で商機をつかむ。
(関麻生衣)
キモノドレスジャパン
きもの文化を世界に
キモノドレスジャパン(光村幸子代表)は、ドレス感覚で羽織るガウン仕立てのレディスの〝キモノドレスローブ〟を提案する。狙うのは日本好きな海外の富裕層。17年に法人化し、今回初めてオリジナル商品を見せる。販路はアジア圏を中心としたセレクトショップを想定する。
きもの好きが高じて会社を設立した。大手ECモールのイーベイで、全国の骨董市や展示会で買い付けたアンティークのきものを販売することから始めた。今でも継続し、顧客はフランスやイタリアなど欧米を中心に世界に広がっているという。「フランス人のお客様は、日本に買い取りに来たほど。海外の消費者のきものへの関心の高さを肌で感じている」
オリジナルのキモノドレスローブの企画を始めたのは約1年前。「日本に旅行に来て、きものに身を包みながら見た景色や感じた空気。そういう日本での体験を自国にも持ち帰ってほしい」。そんな思いを込めた。
キモノドレスローブは「もっと気軽にきものを着たい」「シャワーを浴びた後にぱさっと羽織りたい」という顧客の声を反映した。肌触りにもこだわって、石川産のシルク生地を使っている。
新潟で縫製し、京都の老舗工場で染色する。色柄は6パターン。菊やツバキなどの華やかな古典柄をアレンジした。
ほかに、今治タオルの生地でも試作している。フード付きと無しがあり、それぞれ襟元に桜、背中に富士山の刺繍を施した2種がある。女性向けにローズの地を販売し、手応えを見て、男性向けにトルコブルーの地も検討する。
中心価格はシルク5万5000~6万円、今治のタオル地3万~4万円、アンティークは振袖で3万~5万円。
「きものはファッションとしてだけでなく、インテリアのファブリックなど様々に日常に取りこんでもらえる」と光村さん。オリジナル商品を海外に卸しながら、将来的には日本国内できもの生地をリメイクして雑貨を作る作家やブランドなどの卸売り事業も視野に入れる。
ブロンズマスター
職人技でロックな靴
ブロンズマスター(キクタハルカ代表)の「ジェットマン」は今回初めて、東京・浅草の職人技を生かして作る個性的なメンズ向けドレスシューズを出展する。香港でビジネスに弾みをつけ、今後はアジア圏での販売に乗り出す。
同社は12年に設立した。主な事業はメンズシューズのOEM(相手先ブランドによる生産)で、欧米コレクションに参加する10のドメスティックブランドから発注を受けている。
OEMでは「手の込んだ商品を短納期かつ小ロットで納める小回りの良さ」が強みだ。扱うのはカジュアルなスニーカーからドレスシューズまで幅広い。スニーカーは中国の協力工場1社、ドレスシューズは東京・浅草の職人2、3人と連携している。納期はファーストサンプルで2~3週間、ロット数はスニーカーで100足から、その他は50足から対応している。
「靴業界は景気が悪いというけれど、職人の技術で丁寧に作り込んだ靴はまだ国内にたくさんある。そういう高品質な日本製の靴を世界に輸出して、日本の技術の高さに注目してもらえたら」。そんな思いでオリジナルを作った。
今回見せるのは、メンズのドレスシューズ4~11型。真っ白な牛革のアッパーに、筆やスポンジを使って手作業で染色した、艶やかな透明感と深みのある色味が特徴だ。鮮やかな赤、紫、青に箔(はく)のかかったパイソンなど。パンキッシュでロックなブランドの個性をぎゅっと凝縮した。軽量で屈曲性に優れるマッケイ製法で作った。小売価格は日本円で15万円前後を見込む。
生産はファーストサンプルを代表のキクタハルカさん自ら作り、量産向けはOEMで提携している浅草の職人2、3人が請け負う。年間の販売目標は700足。
販売先はテーラーショップ、セレクトショップなど業態にこだわらない。「品質やデザインをしっかり見極めてもらえたり、ロックテイストの強いドレスシューズをデニムと合わせて履きこなす提案ができたりする店舗」を探る。