こんにちは。合同会社T&Lコミュニケーションズの田中宏高です。引き続き「4つの罠」について説明します。今日は2つ目の罠、「無知の罠」についてです。
中国で戦うわけですから、当然、ルールは中国のルールになります。中国人に物を売る場合、当然、中国人消費者の価値観、商習慣を重視しなければなりません(中国企業に発注する場合は、お金を払うので、中国人の価値観はもちろん、商習慣やルールもあまり関係ありません)。
では、中国のルール、商習慣、中国人の価値観、知っていますか? 「野球」と「ベースボール」が違うように、「商売」と「生意(商売の中国語)」は違うのです。そう言えば、マージャンも日本と中国、違いますよね??
例えば、ルール。
中国で事業を始めて、コストが高いことに驚かれる人も多いはず。例えば、家賃、などは「情報」で分かります。しかし、財務や雇用に関することは「知識」がないと対応できません。
前回の「情報の罠」と重なってしまいますが、情報はお酒を飲みながら集めることもできますが、知識は机に向かって習得するものです。「お酒」と「机」を選ぶと、どうしても情報を優先してしまいますよね??
また、知識があると自信がでますが、知識がないと自身が持てず情報収集に重点が移りがちですが、情報ではますます不安になることはあっても自信が持てません。
というよりも、ルールを知らなければ、戦略・戦術が立てられないので勝負になりません。そういった土俵に上がれない日本企業もたくさんあるのではないでしょうか?
特に、中国は社会主義国で計画経済ですから、ビジネスに対して政府の影響力が強いです。ルールを決める政府の影響力が強いわけですから、ルールの影響力は強いです。
それでは、中国のルールの特徴は…。
「よく変わる」、「現場に即していない」「つじつまがあっていない」
なぜそうなるのか??
• これだけ急成長したわけですから、逆に「変わって当たり前」と考えるべきです。これだけ長期間景気が低迷しているのに変わらない日本のほうがおかしいかもしれませんね。
• 社会主義体制に資本主義を導入するという不思議なシステム、しかも、急激に社会環境は変化しているにもかかわらずルールの変更が追いついておらず、現場に即していないルールも多い。
• 国内で「貧富の差」「地域の差」が大きいので、アメリカのように法律が地域によって違っているべきですが、一党独裁ですから・・・これだけ「差」があるのに同じ法律では処理しきれない。
• ほとんどの国は、法律に従って政策を決めます。しかし、中国は、政策に従って法律を作ります。景気が悪いときはすぐにルールを変えられるので良いですが、長期的なビジョンがなく場当たり的なルールが多く、矛盾も多いです。
結果として、現場に裁量権を与えざるを得ません。
賄賂について、「賄賂=商習慣」という面が伝統的に強い国ですが、現場に裁量権を与えざるを得ないことも賄賂が横行してしまう背景と言えます。
これだけ面倒な中国のルール・法律の知識を完全に習得するのは大変なことです。
ただ、どうせよく変わることですから、専門家でもないので細かく知る必要はありません。また、当然ですが、日本人が日本の法律を知らないのと同様、普通の中国人も中国の法律を完全に知っていることはないです。
日本人以上に中国人は自国の法律に詳しいですが、逆に言えば、日本では日本人が法律を知らなくても大丈夫な平和で生きやすい国だからでしょう。
ポイントは下記の3つです。
• 税金⇒増値税、法人所得税、関税、個人所得税と年間スケジュール
• 雇用⇒社会保険、特別な給料(休日、妊娠、解雇)
• 現場⇒小売業なら店頭の法律、製造ならば工場の法律
これを大まかに習得するのであれば数時間あれば十分です。
多くの日本企業の問題は、このやっかいな法律を知らずに戦おうとして、法律の壁にぶち当たってから法律の勉強をする点です。順番が逆です。やっかいな訳ですから、あらかじめちゃんと身につけておくべき知識なのです。長くなってしまいました。商習慣や価値観についてはまたの機会に・・・
今日のまとめ
知識は自信の源
田中宏高 たなかひろたか 合同会社T&Lコミュニケーションズ代表社員。72年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、アパレル商社に在籍。退社後、単身中国にわたり、ローカルの縫製工場で勤務。その後、上海にて百貨店の立ち上げプロジェクトに参画。同時に、販売現場の運営管理を経験。その後、独立。日中のファッションビジネスの経験を生かして、コンサルティングのみならず、中国進出日系企業支援、OEM生産、イベント開催、関連サイト・アプリケーションの立ち上げなど多岐にわたって活動中。著書「ビジネスで中国人に負けない本」(アスペクト社)