小さな複合ショップ「イン」
身の丈に合ったリアリティーのある服で
じわじわと盛り上がっている東京・渋谷から代々木公園に向かう〝奥渋〟エリアに昨年末、小さな複合型コンセプトストア「イン」(電話03・6416・8298)がオープンした。手掛けるのは、アパレル業界で経験を積んだ甲斐マイクさん。インは自身のブランド「ポスト・アメニティー」初の旗艦店でもあり、奥渋から「インディペンデントな面白さを発信したい」という。
居心地の良さ感じる空間
甲斐さんは、倉石一樹さんが手掛ける「カシュカ」や藤原ヒロシさんがディレクションする「ザ・プール青山」でPRを務めた後、独立して昨年12月にインを開いた。ポスト・アメニティーを始めたのは13年。
自分のために無地のTシャツを作ったところ、友人からも評判で、少しずつ続けてきた。当初は店を出す考えはなかったが、独立して「ショールーム兼事務所」を探すうちに「せっかくなら、みんなに買ってもらえる環境を作りたい」と思い直し、インの開設に至った。
インはポスト・アメニティーのほか、ラテスタンドの「ザ・ラテ・トウキョウ」と期間限定のプロジェクトストアで構成。約12平方㍍の狭い空間にU字カウンターを設置して、カウンター越しにそれぞれの店主とのコミュニケーションを楽しむことができる。
「アメリカの工場を参考にした」という店内は、インダストリアルな雰囲気ながら店主との距離の近さに居心地の良さを感じる空間。飲食も併設することで「現代の都市生活に、ほんの少しのレイドバックを提供できたら」と話す。
全アイテムに愛情注いで
ポスト・アメニティーは、アイコンの白の無地Tシャツ「パーフェクT」を軸に少しずつアイテムを広げてきた。現在、パンツやパーカなど10型を揃える。どれもシンプルで長く着られるデザインをベースに、パターンや生産は国内の実力派メンズブランドを手掛けるメーカーに依頼して、甲斐さんのこだわりを詰め込んだ。
例えば、パーフェクTは、厚地でも柔らかい綿生地を使い「つるっとした」肌触りを特徴とする。ポケットの縫い目も外側には出さず、クリーンな雰囲気に仕上げた。
ポスト・アメニティーを作った背景には、自身の切実な思いがある。白の無地Tシャツはスタイリングに欠かせないアイテムだが、よくある「がさっとした」風合いは苦手。気に入ったブランドができても、次のシーズンに同じTシャツを作るとは限らない。
そのため「いつでも買える物」を作ろうと決めた。アイテムはマイナーチェンジを繰り返し、常に進化させている。4月には、自身が愛用するスウェーデンの「レステロッズ」と協業したアンダーウエアを出す予定だ。
展示会は開かずに、「自分のペースで」新作を出す。全て一人で手掛け、「作る物全てに同じだけ愛情を注ぎ、身の丈に合わせて、自分の手が届く範囲でリアリティーのある物作りをしていきたい」と自然体で物作りと向き合う。
直営店のほかに現在、都内のインディペンデントな個店のほか、自社ECとゾゾタウンで販売する。昨年末から英国のセレクトショップでの販売もスタート。ポスト・アメニティーのインスタグラムを見たバイヤーから連絡がきて、取引が決まったという。
今後はネットでの発信にも力を入れ、「ポスト・アメニティーを好きになってくれる人に、きちんと情報を届けていきたい」と意気込む。