シンクタンクのL2(米ニューヨーク)が、インスタグラム(スマートフォンから投稿できる画像共有サービス)のユーザー作成コンテンツ(UGC)をブランドがどう活用しているかを調査したリポートを発表した。
それによると、インスタグラムで多数のフォロワー(継続した閲覧者)がいるユーザーの投稿と、売り上げには相関関係がないことが明らかになった。ただ、UGCを上手に活用すればブランドのファンを増やし、生涯ファンであり続けるような双方向の関係につなげることは可能という。(ニューヨーク=杉本佳子通信員)
L2の調査では、63%の消費者が商品の写真が分かりづらいなどの理由で購入をやめている一方で、ブランドのファンである客は一度に平均9枚のUG(ユーザーが作成・発信した)写真を見ていることが明らかになった。L2は、経費をかけて見栄えの良い写真を用意しなくても、UG写真を充実させてうまく活用すればいいと提案している。
UG写真を取り入れることによって商品のページに人気が出た割合が最も高かったブランドは、「バンブル・アンド・バンブル」「NYX」「スマッシュボックス・コスメティクス」「ミュラド」といった美容ブランドと「アンソロポロジー」だった。その次は「ゲス」「セフォラ」「コールハーン」と続いた。
一方、この割合がゼロとされたブランドは「エイソス」「オーピーアイ」「トップショップ」で、「メイベリン・ニューヨーク」「レベッカ・ミンコフ」「デシグアル」は割合が5%という低い結果が出た。
L2の調査は、いくつかの実例も報告している。大手ディスカウントチェーンのターゲットは、ipad用のアプリの中に「ターゲットスタイル」というコーナーを設けている。そこでは、客がターゲットで買った商品を身につけて撮った写真にコーナー名のハッシュタグ(他のユーザーが好みの写真を検索できるようにするためのタグ)を付けて投稿することを奨励している。
投稿された写真の下には商品写真が掲載され、それをクリックすると買い物できるページにつながる仕組みだ。14年11月から12月にかけて、このターゲットスタイルのページを訪れた客の購買率は、他の客の2倍だったという。
UGCの活用が進んでいるのは「ベネフィット・コスメティクス」「クリニーク」「ベアミネラルズ」などの化粧品業界だ。ベネフィット・コスメティクスは、マスカラを塗った写真を「realsies」のハッシュタグとともにインスタグラムに掲載することを客に呼びかけ、優勝者に1年分のマスカラを提供するコンテストを行っている。これまでに1万1000以上の応募が寄せられたという。
ホームファニシングチェーン店のウエストエルムのウェブサイトは昨年7月から、商品写真の下に客がインスタグラムに載せた同じ商品の写真を掲載するようになった。ウエストエルムは、どの写真が新たな買い手に影響を与えるかデータを収集し、その写真をフェイスブックやバナー広告に再活用している。この戦略を導入しているブランドは、クリック率が43%増えているという。
ホテルチェーンのハイアットは、電子メールによるキャンペーンにUGCを取り入れている。客が電子メールのお知らせを受け取れるように登録したとき、例えばハワイに興味があると記入すれば、ハワイ関連のUGCが含まれたメールが届く仕組みだ。