全国の繊維産地を回り始めてもう12年になります。ファッションを追いかけ、留学したロンドンで衝撃を受けた日本の素材への高い評価が理由です。コロナ下を除き、年間200軒以上の工場を訪問し、国内外の国際見本市もウォッチしてきました。自らの経験を踏まえ、日本の素材の優れた面と課題についてつづります。
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誰も言及しない
繊維産地へ強く興味を持った最大の理由は、日本で服飾を勉強してきた服好きの日本人にもかかわらず、国内産地のことを全く知らなかったからです。自分なりに、アカデミックにも、現場に近いストリート感覚としてもファッションの勉強したにもかかわらず、です。
振り返ると、当時はそのくらい日本の産地情報が世に出ていなかったことの裏返しだったのだと思います。大学の授業でも日本のテキスタイルが世界中で評価されていることは話題になることもありませんでした。もちろん取引先との契約があり、受託側が情報をオープンにできない背景も関係しています。