繊維業界を取り巻く環境・社会問題の解決に取り組むM.S.I.(名古屋市)の理事を務める稲垣貢哉氏は3月25日、新会社ジャパン・テック・イノベーターズ(JTI、愛媛県今治市)を4月に設立すると発表した。「サステイナブル思考の技術と海外チャレンジを支援し、日本の繊維産業を元気にする」をミッションに掲げ、国際認証の取得や商品の開発・販売、LCA(ライフサイクルアセスメント)の算定まで支援する。海外市場に挑戦したい中小企業と、ノウハウやリソース不足の中堅・大企業を対象に国際的な競争力を持つ事業モデルの構築を目指す。
(小堀真嗣)
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JTIは米NPO(非営利組織)、テキスタイルエクスチェンジの元ボードメンバーで、現在はアドバイザーの稲垣氏を中心に、GRS(グローバル・リサイクル・スタンダード)認証を取得している中小製造業6社が出資して設立する。出資企業はM.S.I.、ラトレ(大阪市)、飯田繊工(同)、サンファッション(同)、信和ニット(和歌山市)、西染工(愛媛県今治市)。社長には稲垣氏が就く予定。認証取得に向け、「実践的で実務的なアドバイスをハンズオンで提供できる」点を訴求する。1社当たり月額5万円を予定。JTIが主体となり、参加企業で一つのユニットとして認証取得できるようにする。
認証の取得支援とともに、信州大学と京都工芸繊維大学などの研究機関や、国内の先端素材メーカー、様々な製品メーカーとのパートナーシップを活用し、素材から製品の開発・販売まで支援する。海外工場とのパイプも活用し、「安定した品質で、持続可能な量産体制も実現」する。
稲垣氏は「国際市場で競争力を高めるには認証の取得や環境負荷情報の開示が必要。それができれば新市場の開拓や競合と差別化できる可能性がある」という。「多くの日本企業が英語の壁や手続きの煩雑さ、高コストを理由に国際的な環境基準の対応を後回しにしている」と指摘。特に中小企業単独で対応が難しい現状を踏まえJTIの設立に至った。「原料から生地、染色加工、縫製といった製造業者だけで作り売っていく中小企業の連合体を作る」と述べた。