仏ケリングのフランソワアンリ・ピノー会長兼CEO(最高経営責任者)は3月13日に東京で開かれたイベントで、「カーボンフットプリント(CFP=商品やサービスが温室効果ガスをどれだけ生み出しているかを示す指標)の93%は自社の外にある。CFP削減にはイノベーションが重要で、今あるプロセスを変革するだけでなくイノベーションに投資することで達成できる」と、スタートアップ支援の意義を強調した。
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日本で初開催した「ケリング・イノベーション・アワード」の贈呈式に合わせて来日し、スパイバーの関山和秀代表と対談した。ピノー会長はグループとしてサステイナビリティーを掲げた07年を振り返り、「ブランドのCEOからは『(サステイナブルに対応することで)クリエイティビティーに制約をかけないで欲しい』と言われたが、クリエイティブディレクターと話すと非常に先進的で、真摯(しんし)に対応してくれた」と明かした。

12年には環境負荷を貨幣価値に換算して算出する独自のEP&L(環境損益計算書)を導入、バリューチェーンのCFPを調査し、大半が自社の外にあることを認識し、「考え方を完全に変えた。サプライチェーンの川上から見なければいけないことに気づいた」という。
22年にグループ目標を見直し、温室効果ガス排出を35年までに絶対量で40%削減を掲げた。このうち「少なくとも半分のソリューションはイノベーションから来る」とし、中国、サウジアラビアに続いて日本でもイノベーションアワードを開催した背景について説明した。
関山代表は人工たんぱく質「ブリュード・プロテインファイバー」の事業化を振り返り、「新しい素材に置き換えることは(採用側に)エネルギーがいるが、ケリングやゴールドウインのような大きな企業が使ってくれて初めて成立する。スタートアップの頑張りだけではだめで、企業や消費者といったステークホルダーの協力でイノベーションが出来る」と協業の重要性を強調した。