【パリ=松井孝予通信員】仏ケリングは、仏ロレアルとビューティーおよびウェルネス分野で長期的な戦略提携を締結し、ビューティー部門ケリング・ボーテを約40億ユーロで売却する。ルカ・デ・メオ氏が9月にCEO(最高経営責任者)に就任以来、初の本格的な経営判断で、債務削減と事業の再集中を目的とした構造改革の第一歩となる。
【関連記事】仏ケリング、新CEO体制始動 グッチ再建に待ったなし
ケリング・ボーテは、主力「グッチ」の低迷を背景に潜在性の高いビューティー市場を狙い23年に設立された。同年、英高級香水ブランド「クリード」を約35億ユーロで買収し、自社展開を進めたが、グッチの不振が続き、25年上期の全社の純利益は前年同期比46%減の4億7400万ユーロ、負債は95億ユーロに膨らんだ。新CEOのデ・メオ氏は財務再建を最優先課題に掲げ、非中核事業の売却を決断した。
この合意には同部門の売却に加え、グッチ、「ボッテガ・ヴェネタ」「バレンシアガ」の香水・ビューティー製品に関する50年の独占ライセンス契約が含まれる。グッチのライセンスは現行の米コティとの契約終了後(28年)にロレアルへ移行する。また両社はウェルネスおよびロンジェビティー分野で共同事業を設立する計画で、取引完了は26年前半を予定している。
ケリングはこの取引で財務体質を強化し、ファッション・レザー分野に経営資源を集中させる。一方ロレアルは、成長を続ける高級香水市場でポートフォリオを拡充し、クリードや将来のグッチの香水を軸に収益基盤を高める。
市場ではデ・メオ氏の迅速な意思決定と、再建方針への期待が高まっている。ケリング株は就任発表以降約60%上昇し、時価総額は380億ユーロ規模に回復している。