BtoBの生地マッチングサイトを運営する上羽英行さん

2019/11/13 06:25 更新


Medium img 8598%e3%81%ae%e3%82%b3%e3%83%94%e3%83%bc  1
「両者がもう半歩ずつ前に出てくれれば、このサービスがもっと広がるはず」と話す

 「旧来型の流通を刷新し、疲弊する織物産地を何とかしたい」と話すのは、大手生地商社出身の上羽英行さん。今年1月、商社やOEM(相手先ブランドによる生産)企業と、織物メーカーの取引の間をとりもつマッチングサイト「KIZIARAI」(キジアライ)を立ち上げた。経費増の要因となる人の介在を極力なくすことで生地メーカーのコスト負担を減らし、産地企業の持続可能性を探る取り組みだ。たった一人での起業で人手も資金も十分ではないが、サラリーマン時代に築いた人脈を頼りに、東京や大阪、地方を文字通り東奔西走する。

(永松浩介)

 スタイレム出身の上羽さんはサラリーマン時代、20年以上にわたって国内産地に出向き、アパレルなどに織物を販売してきた。足を運ぶたびにますます厳しくなる産地の実情を目の当たりにして一念発起、会社を辞して出身地である京都府舞鶴市にバード・ファブ・スタジオを設けた。

新しい問屋形態

 「半世紀以上変わっていない織物の流通をITの技術で革新したい」というのが創業の思い。織物メーカーは元々営業リソースが限られているため、問屋に頼らざるを得ない。しかし、そうすることで中間コストが乗り、アパレルが望む価格と合わず、結局、自らの利幅を縮めるか受注を諦めるしかなく、それが経営の重しになってきた。

 キジアライはいわば、オンラインの新しい問屋形態だ。織物メーカーがサイトに生地を掲載、ユーザーである商社やOEM・アパレル企業が求める生地を条件検索し、マッチする商品があればやり取りが始まる。ただし、検索の時点では相手先企業はわからない。既存の業者が横やりを入れるリスクを回避するためだ。決済は両者が直接行う。

 「今の問屋機能は否定しないが、これまでのやり方だけだと産地はもう持たない。営業費用を削減できるので、むしろ問屋さんにも使ってもらいたい」。サービスの名称は、坂本龍馬の名言「日本を今一度せんたくいたし申し候」に由来し、伝統的な生地流通を一新したいという思いを込めた。

脱〝大量廃棄〟へ

 織物メーカーの登録は無料で、現在、57社が登録、オンライン上に5万2000点以上の製品を掲載している。「大量廃棄も問題視されているし、どこにでもある定番ではなく、オリジナルの素材を掲載するように促している」

 一方、織物を仕入れるユーザー企業は現状60アカウント(ブランド・事業部ごとにアカウントを付与)が登録している。有料と無料があり、課金の有無で使える機能に制限がある。有料は月額1万9800円からのサブスクリプションモデルで、オンワード樫山やサザビーリーグ、トウキョウベース、三菱商事ファッション、三井物産アイ・ファッションなどが利用している。

 織物メーカーは、コストをかけずに展示会を常時開くことができ、海外製品とも比肩する価格で製品を提供できる可能性がある。アパレルや商社は、産地に出向く費用を軽減でき、海外に頼ることなく国産の上質な素材を使える。

 一人で両者をケアする苦労は相当なはずだが、「前職での経験が生きているし、苦痛ではない」と上羽さん。掲載商品のセレクトや産地企業の動画作りのほとんどを担う。メーカー向けにはブログも書き、マーケットの動向なども伝えている。これまでの慣習もあり、取引全体の8割ほどは上羽さんがフォローするが、「なるべく早くこの割合を逆転させたい」。

 有料課金の営業は簡単ではないが、手応えを感じている。契約も取れており、「おかげさまで会社員時代ぐらいの収入はある」。出資の依頼もあるというが、ビジネスモデルがゆがむ危険があるので、固まるまでは一人で進めるつもりだ。

 「国内が一定進めば、海外のユーザーも開拓したい」。まだ道半ばだが、新たなソリューションが受け入れられ始めており、追い風を感じている。


Bnr counter agreement
Bnr denshiban

この記事に関連する記事

このカテゴリーでよく読まれている記事

Btn gotop