今年も「SAKE WEEK」が開催され、初日のオープニングイベントに参加させてもらった。「SAKE WEEK」とは、ヨーロッパに日本酒を広げる活動を行っている団体「Sake Embassy Germany」が主催している日本酒フェアで、毎年10月初旬に開催されている秋の風物詩のひとつ。ベルリンのレストランやバーが協力店舗として多数参加し、期間限定のメニューが提供されたり、関連イベントが行われている。
そのオープニングイベントがミッテ区に位置するイベントスペース「NION Playground」で開催され、ドイツ、オーストリア、スイスに拠点を構え、日本から厳選された日本酒や焼酎を輸入している「UENO GOURMET」が振る舞う他ではなかなか飲めない希少な日本酒や梅酒をテイスティングしながら、ゲストたちと楽しい時間を過ごさせてもらった。
NIONとは「ヨーロッパと日本の橋渡し」をコンセプトに、ベルリンを拠点に長年に渡り活動しているアソシエーションだが「NION Playground」は今年4月にオープンしたばかり。8月には「NION Japan Takeover」と題し、日本の音楽カルチャーと関わりのある3つのスポットとのコラボレーションで音楽に特化したイベントを開催した。難民を支援するプラットフォームであり、ラジオステーションを運営する「Refuge Worldwide」では、Kidkanevil、Midori Hirano、Christoph Bergの3名のアーティストが日本の音楽を3時間に渡り放送し、リスニングバー「Unkompress」では、4時間ぶっ通しで坂本龍一の楽曲だけをかけるといった没入型リスニングセッション、ジャズバー「Rhinoceros」では日本のジャズだけを4時間流すといったユニークなプログラムが実施された。
他にも、ベルリンで活躍する日本人オーナーやアイコン的な人物へのインタビュー、日本食を取り扱う店舗などを取材し、ソーシャルメディアで動画配信している。
実は、NIONのクルーとは2014年に東京で開催されたイベント「BERLIN x TOKYO RESONANZ」で知り合っている。同イベントは、ベルリンと東京の姉妹都市提携20周年を記念し、ドイツ連邦共和国大使館の協力のもとクリエイティブ産業にフォーカスした様々なプログラムが行われた。私もこの時に初めて東京とベルリンが姉妹都市であることを知ったが、ベルリンのテクノアーティストDasha Rush、真鍋大度率いるYour Cosmosなど、両都市を代表するアーティストが出演したクラブイベントがUNITで開催された。その後も2019年には、姉妹都市提携25周年を祝うイベントとして、クラブシーンで活躍する女性アーティストたちをフィーチャーしたイベントをDOMMUNEと渋谷Circusで開催している。
全てのイベントの企画をしているのがNIONであり、姉妹都市提携30周年を迎える今年も新たなイベントを開催予定とのこと。彼らの活動は私がベルリンに移住したきっかけでもあるこの街のローカルカルチャーのおもしろさを日本の媒体で伝えたいと思ったことに共通する。音楽やアート、イベント企画運営などに精通したその道のプロたちが集まって結成されたチームとあって、今後の活動も楽しみにしている。
「NION Playground」はレンタルスペースとして貸し出ししており、これまでに書道や茶道のワークショップなどが行われている。ベルリンのど真ん中に位置し、ビルの最上階からの眺めも最高、バーやキッチン、DJブースなどいろんな設備も整っている。自分主催で何かイベントを開催するのもいいかもしれない。
■NION Playground
https://www.instagram.com/nion.playground/
長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。
セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。