名画とクラフツマンシップが現代ファッションと対比する2つの展覧会がベルリンで開催中(宮沢香奈)

2026/03/31 06:00 更新NEW!


 ベルリン・フィルハーモニーやNeue Nationalgalerieなどが点在する文化複合地区Kulturforum内に位置する「Gemäldegalerie(ゲメルデガレリー、絵画館)」にて、5月31日まで『Gallery Looks. Fashion Stagings at the Gemäldegalerie』と『Echoes of Tomorrow』の2つの展覧会が同時開催されている。ゲメルデガレリーは、1998年に開館され、レンブラントやフェルメールをはじめとするヨーロッパの絵画史に残る著名作家の作品を収蔵する美術館として知られている。

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 同館の前方エリアで開催されている「Gallery Looks. Fashion Stagings at the Gemäldegalerie」では、13世紀〜18世紀初頭のヨーロッパを代表するオールドマスターの名画と現代ファッションフォトやデザインとの対話を提示。同展は、オールドマスターの構図、光の使い方、象徴性が現代のファッションデザインの中にどのように再現されているかを探求してきたドイツ人写真家ラルフ・メッケの提案によって実現した。


 名画の横にラルフが撮り下ろしたファッションフォトが並び、その前にデザイナーのアンネ・ベルネッカー、カレン・イェッセン、アレクサンダー・ギグル、Plaid-à-Porterのエステル・アデリーヌ・トラソグルによる衣服作品がトルソーにて展示されている。これらの作品は、昨年「Der Berliner Salon」の10周年を記念して発表されたコレクションの一部であり、当時ラルフによって撮影された写真とともに再展示されている。

 「Der Berliner Salon」とは「Berlin Fashion Week(BFW)」の期間中に開催されるドイツの新進気鋭デザイナーに焦点を当てたショーケースであり、50名以上のデザイナーが出品している。

 また、2025年にクリスチャン・ディオールのクリエイティブディレクターに就任したジョナサン・アンダーソンは、ゲメルデガレリーにインスピレーションを受け、2026年春夏コレクションを発表している。同展では、パリのオテル・デ・ザンヴァリッドで発表されたランウェイショーの映像もビデオ上映されている。

 後方スペースで開催されている「Echoes of Tomorrow」では、BFWを主催する「Fashion Council Germany」がイギリスの「The King’s Foundation」と「eBay Germany」と協力して行っている若手デザイナーを支援するプログラム「Fashion × Craft」の成果発表が展示されている。参加デザイナーは、アレクサンダー・クドリショフ、ラウラ・デ・ソウザ、レナルト・ボーレ、ヨン・リーゼンフェルト、メラニー・パルツェンチェフスキらが名を連ねる。プログラムに参加したデザイナーたちは、1年間の研修を通して服作りだけでなく、織物や染色、木工や金属加工といった様々なクラフト技術を学び、それをもとにコレクションを制作した。


 バスケット織りの技法で制作された硬質なジャケット、繊細な網のように身体を包むボビンレースのドレス、薄い木材で作られ袖部分に重厚な金属を組み合わせたジャケットなど、素材の対比が見事に表現されている。想像力が豊かであるだけでなく、高度な技術とクラフトの必要性を感じさせる作品群が並ぶ。同展は、伝統的な技術と現代的なデザインを組み合わせた作品を展示することによって、来場者にクラフトの価値やファッションの未来について考えるきっかけを与える内容となっている。


 「Fashion Council Germany」理事長のクリスティアーヌ・アンプは、同展の開催について以下のように述べている。

 「クラフト技術の保存は私たちにとって非常に重要な使命です。V-Collectiveがそのコレクションを通じて伝統技術を可視化し、その継続的な価値を示していることを嬉しく思います。多くのオールドマスターの天才性と職人技を讃える美術館空間でこれらの作品を展示することは、ファッションを単なる現代的表現としてではなく、歴史を持つ文化的資産として捉えるという私たちの使命にも合致しています」と語る。彼女はV-Collectiveの制作プロセスおよび本展のキュレーションにおいて支援を行ってきた」。

 1月30日から2月2日まで開催された「Berlin Fashion Week AW26」に先立ち、1月29日に関係者を招いたプレスプレビューに参加したが、氷点下の寒い日だったにも関わらず、約400名のゲストが来場し、華やかなオープニングイベントとなった。BFWは、これまでにもベルリンの美術館や博物館をファッションの発表の場として活用してきたが、今回のように歴史的名画と同じ壁に、現代のファッションフォトグラファーの写真やデザイナーのクラフト作品が展示されるのは初の試みであり、伝統や歴史を重んじるドイツの習慣が若い世代にもきちんと受け継がれていることを実感した。


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長野県生まれ。文化服装学院ファッションビジネス科卒業。

セレクトショップのプレス、ブランドディレクターなどを経たのち、フリーランスとしてPR事業をスタートさせる。ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積みながら、ライターとしても執筆活動を開始する。ヨーロッパのフェスやローカルカルチャーの取材を行うなど海外へと活動の幅を広げ、2014年には東京からベルリンへと拠点を移す。現在、多くの媒体にて連載を持ち、ベルリンをはじめとするヨーロッパ各地の現地情報を伝えている。主な媒体に、Qetic、VOGUE、men’sFUDGE、繊研新聞、WWD Beautyなどがある。



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