東京・目黒駅前のオフィスにCAD(コンピューターによる設計)やミシンを置き、技術者と相談しながら衣装やサンプル作りが可能――レディスウェアやドレスの製造・卸・販売のコロンは、小規模アパレルや若手デザイナー、起業家、小売店のオリジナルなど、小ロット品や意匠性・独自性の高い服作りを担っている。代表取締役の谷嶋恵子さんをはじめ、女性技術者が主役の企業だ。
(壁田知佳子)
谷嶋さんは、フォーマルウェアメーカーでデザイナーやパタンナー、生産管理などとしてキャリアを積んだ。結婚を機に退職し、06年に個人事業主としてコロンの前身となるコロンコロンを創業した。
デザインやパターンの外注を受けながら、芸能人の衣装や社交ダンス用のドレス、ウェディングドレス製作など、仕事の幅や規模を広げてきた。15年、アパレルメーカーでマチャンダイザーをしていた夫とともにコロンを設立した。
◆依頼者と直接やり取り
目黒駅から徒歩3分という駅前のマンションの一室に構えるオフィスには、工業用ミシンや家庭用ミシン、アイロン、CADなどの設備を置き、その場で試作品を作ることもできる。
都内にあることで、依頼者と直接コミュニケーションができることもメリットだ。縫製工場は地方にあることが多く、メールだけのやり取りでは意図を伝えるのが難しく、サンプル作りやサンプル修正にも日数がかかる。
パタンナー・デザイナーとじかに相談ができ、生産設備を持つコロンは、小回りとスピードが強み。オーダーは1枚から可能で、社交ダンス用のドレスや個人の趣味の衣装などの依頼もある。国内の協力・提携工場での量産も可能だ。
最近ではファッションブランドを立ち上げたい、服を作りたいとクラウドファンディングを実施したり、起業を目指す若い人からの依頼が増えてきた。国内で作りたいがどこに行けば良いか分からない、ロットが小さい、意匠性の高い衣装を作りたいといった悩みを持つ企業や個人の〝駆け込み寺〟のような存在となっている。「物作りに興味のある若い人は増えている。服を作りたいという思いを持つ若い人が、その道に進めるよう手助けしたい」と話す。
◆キャリアを継続する
谷嶋さんが代表に就いたのは18年4月。「どんな会社にしたいのかを改めて考えた」時に、自身の経験も踏まえて、女性技術者の育成やキャリアを継続する環境作りの必要性を感じたという。「結婚や出産でキャリアが途絶える女性も多い。これではデザイナーもパタンナーも育たない」という危機感もある。
コロンの若い社員にはパターンやデザインを実地で教え、今後は学生のインターンも受け入れていく。外注スタッフには、家族の都合で地方在住になった場合でも、家事や育児の都合に合わせて仕事を続けられるような体制も作っている。