ドイツでは店先や家庭のインテリアとしてなぜかブッダが流行りである。
少し前までは、アジア系レストランやエギゾチック系の雑貨屋・家具屋さんくらいでしか目にすることがなかったが、最近は仏教ともアジアとも全く関係ない店先にも次次に登場するようになっている。
カフェ、ワインバー、雑貨屋、花屋、エステサロン、薬局、浴室用品専門店などなどの目立つ場所に、ドン、とおかれている。筆者の近所のアンティークアクセサリーの店先ではなんとブッダがマネキンとなり、アクセサリーをつけてみせてくれている。
一般家庭やホテルなどでも、庭や部屋に飾られているのを目にすることがある。ブッダの頭像キャンドルが食卓上に灯されていたりして、ちょっと驚かされたこともあった。
ドイツで最も多いのはもちろんキリスト教徒だ。しかしイエスもマリアも、教会また道端に道祖神的にしか飾られていない。なのに何故ブッダがショーウィンドーや庭・食卓に飾られるのか。
背景には、ドイツ(そして欧米)における仏教ブームがある。
仏教徒自体は、増加傾向にあるにせよドイツの人口およそ8千万のうち数十万といわれ、1%にも満たない。この数値にはアジア系住民も含まれており、これを除く8〜10万人くらいだそうだ(出所:ドイツ仏教連合ほか)。
ある宗教研究者によると、仏教は宗教というよりは、むしろ実践的な精神論ひいてはライフスタイルとして捉えられているという。
実際、ヨガ、瞑想、少林寺拳法をはじめとする各種武道等を通し、スピリッチャルな体験や教えを求める人は増えている。これらとも関連し、現代人が求める内面の安らぎや調和に導いてくれるのが仏教的な教え、ということになるようだ。
ドイツ各地に仏教センターなるものが存在するのだが、そこに通う人がラジオ番組の取材に 「(仏教センターでの)瞑想トレーニングや僧のお話を通し、内なる静けさ得ることができる。(キリスト)教会へ行ってもそんなことは教えてくれない」 と答えていた。
また別の番組では「神父が権威的なのに対し、ダライ・ラマなど仏教の僧はフレンドリー。時にはおちゃめ。彼の教えは実際の生活や人間関係にも役立つ」と話す人もいた。
このチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世が仏教ブームに大きく寄与していることも確かである。ある世論調査ではドイツ国民の4割以上がダライ・ラマを好ましいお手本的人物と評価していた。宗教界のポップスター、ともよく評されている。
ダライ・ラマは時々著者の住むフランクフルトに訪れるのだが、昨年サッカースタジアムで開かれた講話イベントには、若者を中心に数万人の聴衆が集まった。
ブッダといえば仏教を表し、仏教は当地では、リラックス、心の安らぎ、そこから導かれる健康や美しさといった概念と結びついている。店先にブッダがあると、心や身体に良い物がありそうで、なんだか引き寄せられてしまうのである。
フランクフルト在住。身長152cm。大きなドイツ人の中にいると小人のように見えるらしい。小回りだけは利くジャーナリスト兼通訳。ファッションからヘルスケアまでをカバーする。