コロナ禍は都心や郊外、企業規模の大小に関係なく影響を及ぼしている。千葉県柏市でメンズインポートブランドを主力としたセレクトショップ「ラグラグマーケット」を20年近く運営するスズキインターナショナルの鈴木太郎社長は、アフターコロナを見据えた個店の在り方を模索し、「ピンチをチャンスに」の精神で新事業にも挑戦する。
(大竹清臣)
長期戦は覚悟
例年3月は男性のビジネス需要が大きい時期だが、スーツやジャケット・パンツが強い同店は一気に売り上げを落とした。買い替えや旅行の需要もなくなり、バッグも苦戦、3月の売り上げは半減した。それでも「4月に緊急事態宣言が出されてからも休業はしなかった」という。店頭は来店予約(1組ずつ)での販売が基本だったので、通常営業はできず、開店休業状態だった。
扱うアイテムがイタリアなどのメンズ・レディスともインポートブランドが中心のため、「不要不急のぜいたく品だったことも要因」(鈴木社長)とみている。普段から売り上げ比率の高いECも、自粛ムードの広がりから厳しい数字となった。「ECも都市部の顧客が大半なので、リモートワークが普及し、通勤用のビジネスアイテムは不振。緊急事態宣言の解除後は盛夏アイテムが動くなど店頭の売り上げも回復基調だが、すぐに元に戻るわけではない。販売機会を失った春物の分は取り戻せない」と振り返る。
2月にイタリアの展示会から帰国した後、海外でロックダウン(都市封鎖)が始まり、日本でも外出自粛要請が強まり、「長期戦は覚悟していた。最低でも1年間は売り上げが半減しても大丈夫なように政府系融資機関などでの準備に着手。取引銀行とも良好な関係を維持しており、資金繰りは大丈夫だった」ので、「持続化給付金のあるなしで大きな影響があるわけではないが、小規模事業者にとって、急場をしのぐにはありがたい支援だ」と思い活用した。
既存の手法見直し
今回のコロナ禍によって「自社の事業形態や営業スタイル、従業員の働き方などを見直すきっかけになった」と振り返る。「経営が揺らぐことはなかったが、売り上げが苦戦した理由は既存のビジネス手法にも内在していた」と分析する。日本や米国でもアパレルの大手企業が倒産しただけでなく、百貨店とメーカーの取引形態も限界にきている。「当社でも大手ECモール頼りのEC事業も見直さざるを得ない」との思いは強い。
今春からDtoC(メーカー直販)型自社ブランドによる新事業をスタート。コロナ禍以前からの計画だが、長年にわたり同店の扱いブランドだったカジュアルシャツ主力の「スイープ」を譲り受け、自社ブランドとしてリブランディング中だ。
ただ、春に出展を予定していた合同展も中止となり、「一度立ち止まって新事業を練り直すいい機会になった」とも考えている。鈴木社長は「従来型のビジネスモデルは通じなくなってきており、新事業に全てを注ぐ覚悟で本気で取り組んでいく」とアフターコロナを見据える。