22~23年秋冬ロンドン・コレクションは、フィジカルのショーで服の持つ力を表現するブランドがある一方で、デジタルで新作を見せた実力派デザイナーもいる。突如、ロンドンでの発表を決めたラフ・シモンズもその一人だ。
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ラフ・シモンズは、22~23年秋冬コレクションをロンドン・ファッションウィークのオンスケジュールでデジタル配信した。赤い布がかぶせられた椅子とシャンデリアがつるされた空間で、ショー形式の映像を見せた。キャップから布が流れ落ち、そのままケープのようになるアイテムから始まるショーは、どこかミニマルな気分に包まれる。ベアバックのニットドレスは袖すら付いていない一枚の布。そこにトロンプルイユのようなペイントがされる。ストレートラインのアイテムは、パテントとヘアリーな素材のコントラストで90年代のサイバーのようなムードも取り入れる。
前シーズンに続いて、メンズスタイルの中に当たり前のようにドレスのようなアイテムが登場する。ただ、それがミニマルなラインに収められているため、違和感は全く感じられない。様々なコートには、インパネスのようにショルダーを包み込んでディテールが取り入れられる。MA-1のようなショートブルゾンも、ギャザーでふんわりとボリュームをのせた襟のパーツがかぶせられる。
キャスケットをはじめ、たくさんのヘッドピースがアブストラクトなフォルムを作る。サテンのバッグから伸びる布が、ドレープとなって揺れる。エッドピースやアクセサリーのデフォルメされたフォルムがミニマルな服のラインとコントラストを描く。
(小笠原拓郎)
トーガは、22年秋冬コレクションをデジタル発表した。コレクションの軸になるのは、マスキュリンとフェミニンを融合したジェンダーフルイドなスタイル。ここ数シーズン継続している切り口が、トーガのスタイルとしてなじんできた。今シーズンは特に異なる要素が重なるスタイルを、すっきりと仕上げようとする意識が伝わってくる。会場はがらんとした倉庫。そこで縦横無尽に動くモデルたち。素早く展開する動画の中で、リズミカルに弾む布の動きが記憶に刷り込まれていく。テーラードスーツを上下で切り開き、ストレッチ素材と組み合わせることで、かっちりとしたスーチングが揺れ、楽しく自由なムードが加わる。スーツ地の輪を裾にはぎ合せた円錘(えんすい)状のニットドレスも、スーツの表情を持ちながら、揺れる様子はドレッシーで開放感がある。量感のあるフェイクファーや膨れ織りとニットをはぎ合わせたコートやスカートも、極端に強弱するフォルムが自由で楽しい。キーワードはフープス、バウンシング、スウィンギング。3月に東京で開催するリアルショーでどのように展開するか期待が高まる。
(青木規子)