小売りからの売れ残り在庫をトン単位で仕入れ、廉価で販売する「ラックドゥ」が近畿圏で出店を重ねている。現在13店を構えるが、今期(18年11月期)さらに4店を出す計画で、売り上げは3億円を突破しそうだ。
ブランドを毀損(きそん)しかねない廉売への警戒心が強い仕入れ先と交わした販売ルールを厳守することで、商品の販売依頼は引きも切らず、安定的に良品を店舗に供給できている。「売れ残った商品をスタッフと一緒に再び輝かせるのが醍醐(だいご)味」と運営するドゥーラック(京都市)の今堀陽次社長は話す。
(永松浩介)
◆毎日考えるのが楽しい
きっかけは15年ほど前に始めた家具の販売。大手通販企業の過剰在庫や傷物などの返品を買い取り安価で販売する「家具道楽」がルーツで、今の店名は道楽(ドウラク)と英語のラック(幸運)にちなむ。
通販企業との商売が進むなかで、アパレルへの関心が高くなり、7年ほど前からメーン商材をアパレルに切り替えた。作業は煩雑になるが、家具より回転が早いため現金化しやすいし、倉庫も家具ほど大きくなくていい。
「やり出してハマりました。おもろい」と今堀社長。アパレル不況もあって在庫は心配ないし、「毎日どう売ってやろうかをスタッフと考えるのが楽しい」と話す。
12年に千林商店街に1号店を出してから出店はトントン拍子で、天神橋筋商店街や京橋、池田(ともにイオン)、出町柳(京都市)、本町(大阪市)、古川橋(守口市)など毎年のように出店してきた。
出店先は、商業施設と商店街の二つのチャネル。GMSやSCなどは先方から声が掛かることが多く出店条件が良いが、商店街はピンキリだ。「元気な商店街は家賃や保証金が高いし、その逆だと出店しやすいけど広告費用がかさみます。その間を狙う」。商店街では人の流れをカウントし、大家と家賃交渉し商売が成り立ちそうなら出す。
今も活気のある天神橋筋商店街の出店に際しては1年がかりで家賃交渉し、出店につなげた。「保証金を聞いた時は(物件を)売ってくれるのかと思いましたわ」と今堀社長は笑う。それだけ高かった。
出店には安定的な仕入れが欠かせないが、取引先との販売ルールを厳守することで担保している。「下げ札を外すとか、卸し先と競合する店では販売しないとか」。在庫処分店はルールを守らないところも少なくないため、ドゥーラックには供給元も安心して販売でき、おのずと良品が優先的にまわってくる。仕入れ値は個別交渉だが、小売価格の3~15%で買う。
4トンや10トンで滋賀県守山市の倉庫にやって来るパッキンには何が入っているか分からない場合も多いとか。「チュニックとか品目が書いてあるものもありますが、それはそれで同じものが大量に詰まってたり」。これを、守山店の店長も兼ねる物流担当者と仕分け担当者、社長の3人で仕分けて、各店に送る。
◆最後は100円で売り切る
商品が店に届いてからはスタッフの出番だ。「POP(店頭広告)も含めて楽しそうな雰囲気を心掛けている」という店では売れ行きに応じて2時間ごとに商品を入れ替えている。販売のプロばかりではないが、嘘のない笑顔を基準に採用したスタッフが「どうしたら売れるのか」を毎日考えながら工夫している。「最近では自分が考えていることと同じことをスタッフも考えていてくれて安心できる。スタッフに恵まれてますわ」と今堀社長。
販売価格は元の小売価格の半値からスタートし、売れ行きを見ながら調整するが、「最後は激安価格で処分」。年に1、2回、全品100円にして1週間から10日かけて売り切る。「そやないと、新しい商品を入れられませんからね」。仕入れコストが低いため、小売価格の半値からさらに値下げしても粗利はしっかり取れる。薄利多売ではないのだ。
客は30~60代の女性が多い。3L~10Lサイズを求める客は定期的に来店しまとめ買いしていくという。「百貨店の大きいサイズでトップ1枚しか買えなくても、うちなら物によっては7、8枚買えますからね」。
スタッフや物流が回る範囲で出店はどんどんしたいと考えており、名古屋や東京にまで進出したいという。
◆福祉とも掛け合わせて
今堀さんは最近、福祉事業も始めた。サンアップという会社に出資し、障害者福祉施設の役員として名を連ねる。父親が老人介護施設を運営していることもあり、関心があったという。成功している在庫処分ビジネスと福祉を掛け合わせて、障害者の自立を支援したいと考えている。
在庫処分品のネット販売の出品や発送作業を入居者に仕事としてやってもらおうというわけだ。「軌道に乗るまで2、3年はかかるでしょうけど、彼らが食ベていけるようになれば」と考えている。