物価上昇から消費者の外食選びもコスパ重視の傾向が続いている昨今だが、一方で「外食だからこその付加価値」を求め、普段の外食は節約志向を強めながらも「たまに行く外食の非日常感」を堪能したいというプレミアム志向の動きも見られる。そうしたニーズを背景に、高価格帯業態の動きが活発になっている。
調理光景を披露
1927年に創業し、銀座エリアを中心に本格会席料理「個室会席・北大路」などを展開する大東企業が昨秋、赤坂・永田町の一等地にある「個室会席・北大路・赤坂茶寮」をリニューアルオープンした。同店は250坪・216席の大型店舗で、2~80名まで対応できる全室完全個室のつくり。同社は「板前オープンスクール」を開講するなど板前の育成に積極的で、板前の経験値を上げるために来店客に緊張感ある調理光景を披露する舞台のような位置づけで、オープンキッチンを採用した。このオープンキッチンは板前の育成とともに、調理のライブ感を演出する来店客へのサービスといった側面もある。近年オープンした新店舗でも、調理パフォーマンスを見せるオープンキッチンを採用し、外食の体験価値を打ち出す事例は増えている。同店の客単価は1万2000~1万3000円と高価格帯だが、「以前はビジネスの接待利用が中心だったが、近年は家族や親戚同士の会食など〝家族接待〟が増えている」(同)と好調だ。
常連客が主導し実現
高級中国料理店「銀座楼蘭」の復活劇も興味深い。1971年にホテルパシフィック東京(現在は閉館)内に誕生した中国レストラン「楼蘭」は、82年には銀座コアビルに「銀座楼蘭」を出店。フカヒレなどの高級食材を使った華やかな広東料理の名店で知られたが、2021年に閉店。この閉店を惜しみ、常連客であった江連昌愛氏(現代表取締役)がジャパンダイニングを設立し、当時の料理人やスタッフを再結集して23年3月に「銀座楼蘭」復活を実現した。
現在の「銀座楼蘭」はかつての味をそのまま受け継ぎながら、時代に合わせた新メニューも積極的に採用し、評判を呼んでいる。「銀座×高価格業態」はインバウンド客がメインという飲食店も多いが、同店の客層は実は外国人観光客は少数派。8~9割は当時の「楼蘭」ファンが占めているという。長く愛され、常連客をしっかりとつかんでいた名店ののれんの強さと共に、消費者が納得する価値を提供できるのであれば、高価格業態であっても十分な支持を得られるという事実をうかがわせる。
(日食外食レストラン新聞・森明美)
