《つくる編・店舗》満足したら、破壊する
ギリギリまで粘り、心を込めて作り上げた商品。それを消費者に届ける店作りも、マッシュスタイルラボのオリジナル性が詰まっている。社長の近藤広幸は、服作りはプロデューサーという一歩引いた立場をとるが、店舗デザインは今でも自ら手掛ける。それはまるで、建築デザイン出身の自分が思い切りクリエーションすることで、社員を鼓舞しているようにも映る。
同じ店は作らない
「お店はブランドの総合力として、一番大きなアイデンティティー」と近藤。同じ店作りはせず、半年ごとの出店、改装で常に新しいことにチャレンジする。「1店舗ずつ進化していって、大満足すると破壊したくなる。もうからないよね」と笑う。「スナイデル」の新しい店装は、その〝破壊〟の一つだ。
これまでは、木を多用した温かみある店装だったが、新店装はシンプルなアートギャラリーのように変えた。圧迫感を与えず、見通しをよくして買い回りしやすい軽やかさを意識した。「長年やっていると、店装の明確なチェンジがデザイナーの成長を促す場合もある。商品レベル、店、接客が互いに高めあうことが大切」と語る。
今秋改装した「リリーブラウン」藤井大丸店は、ニューヨークのビンテージショップの2階のVIPルームがイメージ。マネキンは、大理石のような質感を出すために試行錯誤を重ねた。照明は「最後のお化粧」。店の隅であっても、明るく居心地の良い場所にするため、光の当て方まで気を配る。「服がかわいそうになっちゃいけない」。近藤もプライドを賭ける。
創業からのチーム
今春、近藤を含めた役員らは、久しぶりにロンドン、パリにリサーチに行った。そのメンバーの中には、スナイデルの1号店からずっと組んでいる設計事務所の社長もいた。近藤と一緒に街を歩きながら、イメージを共有していった。「近藤社長も職人をリスペクトしていて、上下関係がない。だから、社長のために壁塗りますっていう業者も多いんですよ」という。
単なる取引先でなく、チームの一員として考える。そんな仲間と、しっかり思いを共有することで、ブランドの世界をぶれずに消費者に伝える。他社を巻き込む力も、マッシュスタイルラボの強みだ。
=敬称略