染色加工の松尾捺染(大阪市)は、大阪・船場の創業地に開設したカフェ・ギャラリー施設「船場盛進堂」からの発信に力を入れている。オリジナルプリント生地の販売とともに手芸作家の作品展やワークショップ、さらには伝統芸能の文化イベントにも取り組みながら、「繊維の街・船場」の地域再生を目指す。
1926年に創業した本社地に残る自社ビルをリノベーションし、今年5月にオープンした。約92平方メートルの敷地に地上3階、地下1階の建物で、1階にギャラリーとカフェを併設。大きなガラス窓の明るいゆったりとした空間で、テキスタイルを眺めながらお茶が楽しめる。また、地下1階も戦時中の防空壕を改装した特設ギャラリーとなっている。
2階はテキスタイルショップとワークショップのスペースがあり、常時1050マークの生地を揃えてカット販売するほか、各種ミシンも4台備えている。3階は企画オフィスがある。
施設を運営するのは、関西のアーティストと製造業を結びつけるプロジェクト「アートで元気」。同施設をデザイナーやクリエイターの発信の場に位置づけ、額装アーティストの作品展やカルトナージュの展示販売、手作りグッズ教室などの実施に取り組んできた。「関西芸能の発信のスペースにも生かしたい」(津村長利アートで元気代表)とし、ギャラリーで上方落語の会も開いた。
国内テキスタイル産地の縮小傾向が強まる中、松尾捺染では「本業のBtoB(企業間取引)を維持するためにもBtoC(企業対消費者取引)事業の構築が必要」(松尾治社長)として百貨店催事販売に参加し、今年からネット販売も始めた。催事やネットで「実店舗の要望が多い」ことに加え、「かつては人通りの多かった船場かいわいに、人の流れが取り戻せれば」と考え、ギャラリーを開設した。