《スタンス》「ミディアム」クリエイティブディレクター兼デザイナー、中場直さん 気分に合わせて表情変える服を
その人のライフスタイルやその日の気分に合わせて表情を変えられる服を作りたい――18年にスタートしたレディス・キッズブランド「ミディアム」は、「形にとらわれずに変化を楽しむ」がコンセプト。
「一つひとつの物を大切にする心を」という考えのもと、エシカル(倫理的)な物作りへの関心も高めている。
(関麻生衣)
■スパイスひとさじ
ミディアムは、ワードローブで眠っている服に一着合わせることで、着る人のスタイルの幅が広がるような服を提案する。着方は一通りではなく、柔軟に着こなしの幅を広げられるシンプルなデザインが特徴だ。
例えば、カットソートップはダブルジップでケープのようにも着られ、ニットトップは袖に入れたスリットから腕を出して着ることもできる。着方を工夫することで、自分に合ったスタイルを発見できる面白さが魅力だ。
定番アイテムもある。中でも、中場さんがこだわってるのは「幼い頃、洋裁をしていた祖母が縫ってくれた」思い出のあるベルボトムパンツ。毎シーズン、大人服でも子供服でも人気が高いアイテムだ。
スタイルの幅を広げるため、ルック写真にも工夫を凝らす。普段から中場さん自身が着ている服や古着をミディアムの服と合わせて撮る。新作の服だけでは分かりづらいため、ミディアムを普段のスタイルに加えると、どんな表情の変化を出せるのかを見せるのが狙いだ。
服作りの根底にあるのは、「一つひとつの服や雑貨を長く大切にしたい」との思い。それは、中場さんが好きな古着にも共通する。「古着は時代やそれを着た人が育んだもので、自然と大切にしようという意識が芽生える。ミディアムも同じように愛してもらえるブランドにしたい」と話す。
■副産物の鹿革ポーチ
エシカルな物作りを意識して、生産過程で廃棄される資材や食用の副産物を活用したアイテムも作っている。20年春夏向けでは、野生鹿の副産物の革で巾着バッグを作った。レディスOEM(相手先ブランドによる生産)企業のレオン・インターナショナルの自社ブランド「ポルティラ」で使用されている素材を採用した。
ポルティラの鹿革は、重金属を使用しないなめし剤で地球環境に配慮している。巾着バッグは、革の切れ端を装飾として付けてアクセントにした。色はベーシックな白とベージュに、遊び心のあるミントを加えた。ただエシカルなだけでなく、「ファッションアイテムとして持ちたいと思えるもの」を意識した。
「日の目を見ない素晴らしい素材や資源をミディアムとして面白いものにしていきたい」と中場さん。環境に配慮した物作りをするために「知ることはたくさんある」と学びの途中だが、「とにかく一歩踏み出すことが大切」と意欲的に取り組む。