「新型コロナウイルスへの対策で4000万円かかったけど、他社はどうなの?」。そう質問され、即答できなかった。国内外の出張費が激減したとか、テレワークでオフィスの賃貸面積を減らしたとかは聞いていたが、コロナ拡大を防ぐための経費については盲点だった。
出入り口の消毒液、体温測定器、商談室の間仕切りなど、どこの会社もコロナを機に新たに導入したものばかり。リモートワークに伴う機器の整備も、効率的な業務推進の上で欠かせなかったとはいえ、コロナで一気に導入を迫られた。
繊研新聞社は毎年、商社を対象に調査している。19年度の単体繊維部門売上総利益の正社員1人当たりの額は、21社平均で3157万円。トップの6546万円から21位の791万円まで開きはあるが、他社のコロナ対策費を尋ねた企業は、売上総利益1人当たり平均を優に上回る額をコロナ対策に投じた。コロナ下でも収益を確保できているからだ。
ファッション消費は厳しく、減収を強いられる状況は続きそうだ。減収ながら増益となる企業もあるが、利益の中身が問われる。常態化するコロナの対策費用をまかなったうえ、新たな販路や商品の開発が進んで増益に寄与しているか。そこに向けて社員が仕事にやりがいを感じ、生き生きと働けているか。その結果としての増益なのかだ。