ユニチカが繊維事業からの撤退を発表したのが昨年11月末。6月、事態が一気に動き始めた。岡崎事業所をセーレンに譲渡する基本合意を20日に発表。25日にはシキボウ、瑞光、カワボウとの事業譲渡に向けた基本合意、27日にはボーケン品質評価機構にユニチカガーメンテック全株式の譲渡を決めた。
タイでスパンボンドを生産するタスコやユニチカトレーディング(UTC)が手掛けるポリエステルフィラメント事業、ユニチカメイト、大阪染工などの売却先は今も探している。
シキボウとの共同会見でユニチカの藤井実社長は、「今回の合意でかなりの部分はカバーされる」と説明した。会見後社長に「少しは肩の荷が下りたのでは」と聞くと「とんでもない。まだ売却先が決まっていない事業があり、そこには従業員がいる」と語気を強めた。加えて、「どれもまだ基本合意しただけで細かな交渉はこれから。年内には事業譲渡を完了させ、同時に再生計画を着実に進める」と表情を引き締めた。
その後、ある合同展でUTCのブースを取材した。ただ、出展していたのはまだ譲渡先が決まっていない事業分野。担当者は「数年かけて開発した新素材がやっと完成した。これから販売というタイミングなのにどうなることか。できればUTCに残り、開発、販売を続けたい」と語った。切なる願いだ。