ミャンマーで国軍によるクーデターが起こった。通常、海外でこうした非常事態が起きれば日系企業は、まず駐在員の安否、そして工場・営業所の稼働状況などの確認を行うが、今回は通信環境の不安定もあり、現状把握まで時間を要した企業が多い。
予兆はあった。昨年の総選挙では、アウン・サン・スー・チー国家顧問が率いる与党が躍進したのに対し、国軍系の野党は議席を減らした。つい先ごろには国軍への抗議のために国境警備隊幹部らが大量辞任するなど、異例のニュースも入ってきた。想像以上に緊張が高まっていたのだろう。
かつて、ミャンマーはイギリスの植民地だった。第2次世界大戦でイギリスと戦端を開いた日本は、独立を支援するという名目でミャンマーに進攻した。その前には、現地の人々に武器を供給し軍事訓練まで行った。訓練を受けたのが国軍の祖とされる有名な「30人の志士」。そのリーダー格がアウン・サン将軍であり、スー・チー氏の父親である。
過去の軍事政権時代も、日本は対話の窓口を閉ざさず、経済支援を継続しながら他国と一線を画した外交を行ってきた。アウン・サン将軍亡き後もかつての国軍幹部と日本との人的関係が水面下で続いた。対話を通じて、欧米諸国とは違う解決法を見いだせないか。力に頼らない穏やかな解決を祈りたい。