「利は川下にあり」。伊藤忠商事は「利益の源泉は川上から川下にシフトしている」としてマーケットインによる事業改革を進める。岡藤正広会長CEO(最高経営責任者)は、「伊藤忠は生活消費が看板。他商社と比べて消費者との接点が多い」と強みを磨く。
単に小売りを傘下に置くだけでは従来と変わらない。データ活用のほか、ファミリーマートで金融サービスを強化、ヤナセの富裕層に高級車以外を提案するなど、グループ会社の顧客に様々な商品やサービスを提供しようとしている。
他商社や素材メーカー、大企業から中小企業まで消費者と直接つながり始めた。消費者に近付いてニーズを探り、新たな商材やサービスを生み出したり、商社では「中抜き」対策もある。ある商社幹部は「作り過ぎの是正、適時適品、商品の低価格化などを実現するにはDtoC(メーカー直販)が自然な流れ。DtoCを柱に育てないと成長は限られる」と話す。
ただ、卸型アパレルの多くがSPA(製造小売業)化に失敗したように卸と小売りではビジネスそのものが違う。結局は小売り、サービス業になりきれるかが鍵だ。小売りの事業会社を活用するのと、本業のあり方を変えるのでは意味合いが全く異なる。自分たちは何をすべきで、何をしてはいけないか。その判断次第で結果が大きく異なる。