《めてみみ》未来を紡ぐ志

2021/04/09 06:24 更新


 百貨店やGMS(総合小売業)、SC、アウトドアメーカー・専門店などと地方自治体が連携協定を結ぶ事例が広がってきた。「官」だけでは解決が難しい課題を地方が抱えるためだ。中身は産業や観光振興、街作り、就業者や起業者支援、高齢者生活支援など多岐にわたる。

 一方の「民」も、百貨店やGMSは売上高の減少に歯止めがかからず、店舗活性化策は喫緊の課題だ。SCも買い物機能だけでは集客力の維持が困難になり、クリニックモールやワーキングスペースの導入、公園の併設など施設の多機能化が進む。

 協定締結の背景には、「地域振興と館の活性化は密接な関係」との認識の高まりがある。当然、すぐに成果が出るものではない。特に少子化・高齢化が進む地域の本質的な〝活性化〟は短期では困難だ。連携協定は、当該地域で長期的に事業を継続する意思の表れと捉えたい。

 こうした協定を、通常の出店契約にも活用できないだろうか。多くのブランドや業態が生まれては消えていく。出退店が頻繁にあるのも、もったいない。売上高と家賃という経営指標とは別に、館側と出店する側が未来を紡ぐ志を共有できるなら連携協定を締結する。例えば、地域に根ざした独特のショップを共に作るとか、3世代が通い続ける老舗店を生み出すとか、可能性はあるはずだ。



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