《めてみみ》渇望と喜びと

2021/09/17 06:24 更新


 22年春夏ニューヨーク・コレクションは、本格的なフィジカル(リアル)のファッションショーが復活する第一歩となった。現地の模様から、新しいファッションへの渇望や人と集う喜びを感じ取ることができる。

 欧米に比べて、フィジカルのショーが開催しやすかった東京でも、同じような思いを抱いた。楽天ファッションウィーク東京最終日の「カラー」は、観客が貸し切り電車で移動するショー会場への旅。到着した駅での電車とプラットフォームを使ったショーとなった。参加した観客たちは、再会と非日常を楽しんだ。

 ファッションショーは、ただ服を見せるためだけのものではない。服を通じて、そのシーズンの気分やスタイル、時代との関係を表現するものだ。観客と服をどう出合わせるのか、そのためにはどういう演出が必要なのかを計算して作り上げる。

 とはいえ、ショーの根本には服の力がある。プロダクトとしての服の完成度、説得力がないと、演出に服が負けてしまって服が全くとがって見えなくなることもある。一方、見る側が服の完成度を判断できないと、演出に感激してしまっておかしな論評をしてしまうケースもある。ファッションショーは、服の力を基にしたコミュニケーションツール。22年春夏、デザイナーたちはどんなメッセージを発信するのか、楽しみだ。



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