七彩は現存する日本最古の洋装マネキンを保存しています。100年前の1925年に島津マネキンで、彫刻家荻島安二によって作成された少女2体です。
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この2体は石膏(せっこう)でできていて、少し崩れかけていますが一見人形のような造形です。当時のマネキンは芸術とは一線を画し、忠実な再現を目的としておらず、30年代前後の古い写真からも、多くは人形の延長線上として親しみや可愛さに重きを置いていたように見えます。
戦後、さらに西洋化する日本社会で洋装が主流となり、需要は急拡大していきます。経済成長につれ、マネキン表現は時代とリンクしつつ、リアル(西洋への憧れ)へと変化する様子を見てとれます(なぜか、西洋人なんですよ、百貨店のバーゲンのチラシのモデルもそうでしたね)。
徐々にリアルの度合いを増し、70年代初めには実際の人間の全身を直接型取りしたスーパーリアルマネキンを七彩は発表します。珍しさもあり話題となったものの、あまりのリアルさに訪れた人から不評を買い、百貨店の売り場からもいなくなりました。
このスーパーリアルなマネキンは成功とはいえない結果に終わりましたが、挑発的で実験的な取り組みの一つであり、その後も新しい表現に挑んでいきます。
これは、ファッションの世界で常に新しい価値観を生み出すことを時代に求められ、応えてきたマネキンの歴史であり、簡単には変化できない人間の身体に対するマネキン自身の挑戦のようでもあります。
(七彩代表取締役社長執行役員 瀬川剛)
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「私のビジネス日記帳」はファッションビジネス業界を代表する経営者・著名人に執筆いただいているコラムです。
