都心百貨店のインバウンド(訪日外国人)需要が急回復している。8月の免税売上高は、コロナ禍前の19年比で伊勢丹新宿本店が9割増、三越日本橋本店が2.2倍、三越銀座店が7%増だった。同様に松屋銀座本店は9割増で、全館に占める免税売上高の比率が19年の25%から39%へ一気に上昇した。
コロナ禍前と異なるのは爆買いが減り、円安が追い風となりラグジュアリーブランドや宝飾品、時計など高額品を買い求める個人旅行客が急増していること。「国内客と同様、ここにしかない商品を目的買いしている」(三越伊勢丹)という。昨年10月の水際対策の緩和以降、韓国、香港、台湾をはじめ東南アジア、米国などを中心にけん引する。
コロナ禍前のインバウンドの主役は中国だった。政府観光局によると、19年に中国本土から959万人が日本を訪れ全体の3分の1を占めていた。現状、中国は19年比で2~3割の水準。
中国政府は日本への団体旅行を8月10日に解禁したが、足元の押し上げ効果はあまり大きくない。個人旅行客を中心に「中国からの訪日客は件数、売り上げともに徐々に増えている」(三越伊勢丹、高島屋)が大きくは伸びていない。富裕層を中心としたリピート客が増えており、海外の顧客と個でつながる戦略を強める。10月の国慶節でどう変わるか注目だ。