勤め人にとって、人事異動のある春は緊張感漂う季節だ。「今年、自分は昇進や転勤の対象なのか」、上司からの呼び出しにドキドキさせられた人も多いのでは。遠方への転勤や海外赴任が決まれば、新生活への準備で一気に慌ただしくなる。
本紙記事も3月は多くの人事情報が掲載される。取材でお世話になった人の昇格や海外赴任を知ったり、旧知の方が繊維担当として戻ってこられるのを目にした。
さて、近頃は転勤・昇進といったキャリアに対する考え方が変化しているという。パーソル総合研究所が昨年に発表した就職意識調査では、就活生が「転勤のある会社」を「受けない」「できれば入社したくない」と答えた割合は合わせて50%を占め、「基本給の30%以上の手当があっても転勤したくない」が4割近くあった。20代を対象にした別の調査では、「出世したくない」が80%近くという結果もある。初任給の大幅アップが話題になっているが、若者が会社に求めるものはお金だけではない。
「どんな条件でも働き口を見つけなければ」と焦った就職氷河期世代からするとなんともうらやましい限りだが、働く人の意識や労働環境が変わっても、仕事の本質が変化するわけではない。仕事を通じてどう社会に貢献し、対価を得るか――職場環境が変わる春は、自身のキャリアを見つめ直すいい機会でもある。