地方を回り、お国自慢を聞くのは楽しいもの。名所旧跡や食べ物、歴史上の偉人など話題は多種多様。時に、熱い郷土愛を持つ人に出会うこともある。先日、鹿児島県出水市でも熱い人に出会った。年は80歳前後と思われるが、古武士的な風格のある人だ。
鹿児島は薩摩の時代から勇武を誇る土地だ。特に出水地域は仮想敵だった熊本藩との境であり、最強だったと前段の話が始まる。関ヶ原の戦いでは、多勢に無勢の中敵陣を突破した逸話が有名だが「出水武士がもう500人おれば家康の首を取っていた」。その後も出水最強説が延々と続いた。
明治の廃藩置県から150年余り。新聞、ラジオや交通網の普及もこの1世紀である。江戸時代の鎖国による〝島国根性〟を否定する声もあるが、その一方で、300近い藩に分かれていた名残から、地域性豊かな場所がまだある。各藩がこぞって地域の特産品作りに力を注いだことも、様々な伝統工芸や職人技を生み出した。
トランプ関税騒ぎ以降、繊維産業で中国や東南アジアに築いてきたサプライチェーンが見直されるかもしれない。数少ないとはいえ、日本には海外に誇れる産地の技が残っている。「まだまだ規模は小さいけれど世界中にこの商品を広げていきたい」という若手経営者もいる。地域の人たちが大いに自慢できるような物作りを目指してほしい。