この時期、郊外を散策するとツバメが飛び回るのを見かけるようになった。今年も遠くから渡ってきて、子育てを始める季節を迎えたのだと実感する。
ツバメを巡っては、心に残る思い出がある。それはコロナ禍の真っ最中のイタリア・ソロメオ村からブルネロ・クチネリさんが世界に送った手紙。ソロメオ村にツバメが戻ってきたことになぞらえて、この厳しい状況もいずれ収まり再会する時が来るというものだった。そんなクチネリさんは創業以来、人間主義的資本主義を掲げ、持続可能なファッションビジネスを進めてきた。その実績が評価され、英国ファッション評議会の25年の功労賞を受賞することが決まっている。
リーマンショックやバブル崩壊に見られるように、競争原理の中で資本主義は時にコントロールできない暴走を引き起こす。今回のトランプ関税を巡っても、世界経済への影響がどれほどになるか見えない。トランプ政権はまた、気候変動対策やジェンダーに関する規制など、さまざまな方針を転換しようとしている。そんな時代に、私たちはいかなる倫理観をもってビジネスに臨むべきなのだろうか。
ツバメは子育てのためにはるばる海を渡り、再び故郷へと戻る。私たちも子供たちの未来を守るための旅の途中かもしれない。人間主義的資本主義が正念場を迎えようとしている。