《めてみみ》せんい館こそないけれど

2025/05/14 06:24 更新NEW!


 「もう行かれましたか?」-―最近、関西で取材する際の定番の会話になっている。4月13日に始まった大阪・関西万博のことだ。行った人はまだわずかで、行きたいと熱心に話す人もそれほど多くない。パビリオン建設の遅れなどネガティブな話題が多かったせいか、もう一つ盛り上がりに欠けているようだ。

 とはいえ国際的なビッグイベントの認知は高い。開会に間に合わなかった海外館もオープンし来場者数は1日10万人前後とまずまず。外国人観光客が日本を訪れるきっかけにもなり、ホテル、ショッピングなど波及効果も見込まれる。

 今回とよく比較されるのが70年の大阪万博だ。「月の石」を展示した米国館などが人気を集め、6400万人以上が訪れた。この時には「せんい館」も設置され、日本紡績協会、日本羊毛紡績会をはじめ業界を挙げて日本の繊維を発信した。パビリオン設計に携わった画家の横尾忠則氏が、東洋紡の谷口豊三郎会長(当時)に直談判して斬新なパビリオン案を通したとの逸話も残る。

 今回はせんい館こそないけれど、日本の多数のデザイナーがパビリオンのユニフォームを手掛け、万博でしか見られないショップや産地企業による期間限定展示もある。繊維ファッション産業はどんな未来を描き、人びとの暮らしをどう豊かにしていくのか、足を運んで考えるきっかけにしたい。



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