《めてみみ》環境問題の踏ん張りどころ

2025/09/04 06:24 更新NEW!


 今年の夏は暑かった。気象庁の発表によると、6~8月の全国の平均気温は平年よりも2.36度も高く、観測史上最も暑い夏だった。地球温暖化は確実に進んでいる。国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)の期限は30年。すぐそこに迫っている。

 最近取材で、環境に対する取り組みの停滞や後退を感じることが増えた。積極的にオーガニックコットンやリサイクルポリエステルを使ってきたブランドも、「もちろん使いたい。しかし様々なコストが上がり、苦労する中でバージン(新品)の方が安いのだから(仕方がない)」と通常の綿やポリエステルに戻す話をしばしば聞く。

 これは消費者心理と合致する。日銀の6月の「生活意識に関する調査」によると、消費者が今後1年間で商品やサービスを選ぶ際に重視することは断トツで「価格の安さ」。一方で「環境や社会に配慮している」を選ぶ比率は20年ごろをピークに下がりつつある。

 繊維商社のヤギは環境配慮型素材「ユナ・イト」シリーズで、「サステナぶらないサステイナブル」を掲げる。サステイナブルを前面に出さず、価格を抑えながらこうした素材への移行を自然な形で進めるのが重要と見る。

 業界の環境問題への関心が一過性で終わってしまうのか、ここが踏ん張りどころだ。今以上にぐっと広げるには価格問題の解決が鍵を握る。



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