《めてみみ》写真の力

2025/09/10 06:24 更新NEW!


 ネイチャーフォトグラファー柏倉陽介氏の作品展を見に行った。カリマンタン(ボルネオ)島で撮った写真は特に心に響いた。そこではパーム油の原料となるアブラヤシのプランテーション開発が進み、野生動物のすみかだった熱帯雨林が減少していた。森が無くなり、親を失ったオランウータンの子供が保護施設で暮らし、人の手を借りながら木登りの仕方など森の中で生きる術(すべ)を教わっていた。

 仕事を終えて自宅に帰ろうとする母親代わりのスタッフの頬へ、孤児が柵越しに手を伸ばして引き留めようとする写真には胸を打たれた。いくら文字や数字で環境問題の深刻さや、保全と再生の大切さを訴えても、「この写真に勝るものはない」と感じた。

 環境問題への関心が薄らいできたと言われる。企業側もあらゆるコストが上昇するなか、割高なサステイナブル素材の採用や製品の長期使用を促す施策などを進めにくくなった。一方、猛暑日が過去最多となる地域が日本で相次ぐように、地球温暖化対策は待ったなしだ。環境運動家デビッド・ブラウアーが言ったように、そもそも「死んだ地球からビジネスは生まれない」。

 今こそ原点に立ち返り、それぞれができることを追求したい。周囲の協力を得る際、多くの人の感情に訴えやすい写真や映像を有効なツールとして使っていけたらと思う。



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