24年春夏に向けたミラノ、パリのファッションウィークは、コロナ禍前の活気を取り戻し、若手支援や参加ブランドの多彩な広がりなど、それ以上の華やかさも期待できそうだ。それぞれの見どころを現地通信員が紹介する。
【ミラノ】新ディレクター、協業に注目
24年春夏向けのミラノ・ファッションウィーク・ウィメンズコレクションは、9月19~25日に開催される。フィジカルショーは62、デジタルショー5、展示会76、イベント33の計176が計画されている。最終日のショーはデジタルのみとなる。コロナ禍前の19年9月の回より会期が伸び、ショーの数は増加。靴の見本市ミカムミラノ、皮革小物の見本市ミペルの会期とも一部重なり、バッグやシューズのプレゼンテーションも数多く予定されている。ミラノは完全に以前の活気を取り戻しそうだ。
今回の初参加ブランドは、「ドルチェ&ガッバーナ」の若手デザイナー支援プロジェクトでデビューするブラジル人デザイナーの「カロライン・ヴィット」、伊「アヴァヴァヴ」「キアラ・ボーニ・ラ・プティ・ローブ」「ズィ・アッティコ」、スウェーデンのアップサイクルブランド「レーヴ・リヴュー」。そして注目は、新クリエイティブディレクター、ピーター・ホーキングスのデビューコレクションを発表する「トム・フォード」だ。ホーキングスはトム・フォード時代の「グッチ」でキャリアをスタート。06年から「トム・フォード」に参加している。
そのほかのビッグブランドの新デザイナーデビューも相次ぐ。「グッチ」のサバト・デ・サルノ、「バリー」のシモーネ・ベロッティのデビューコレクションが発表される。インハウスデザイナーから起用されたデ・サルノ、グッチで16年間の経験を積んだベロッティ。同じオリジンを持つデザイナーたちがそれぞれのブランドでどう表現するのかという対比も興味深い。
ブランドの活性化に欠かせない協業プロジェクトの発表もある。「モンクレール」はファレル・ウィリアムスとの協業コレクション発表イベントを行う。「マックス・アンド・コー」はNY在住のアートディレクターでインフルエンサーのソフィア・サンチェス・ドゥ・ベタックとの協業カプセルコレクション、「ウィークエンド・マックスマーラ」はアーサー・アルベッセとの協業で、シグネチャーコレクションを発表する。
周年を迎えるブランドは「フラテッリ・ロッセッティ」がブランド創立70周年、「モスキーノ」が40周年。イベントなどの詳細はまだ発表されていない。
若手支援とサステイナビリティー(持続可能生)を打ち出してきたミラノのファッションウィークだが、その傾向は続く。若手支援では、乳がんのリサーチ団体と組んだ若手デザイナーを集めたショー、主催者とLVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン、「フェンディ」、伊職人連盟との協力による、才能ある職人に与えられるアワード「優れた職人賞」の授賞式、展示会形式の「ファッション・ハブ」などが予定されている。サステイナビリティーについては、「伊ファッション評議会・サステイナブル・ファッション賞」の授賞式がミラノスカラ座で行われる。
(ミラノ=高橋恵通信員)
【パリ】ますます多彩な顔ぶれ
9月25日~10月3日に開催されるパリ・ファッションウィークは、ブリュッセルベースのベルギー人デザイナーの「マリーアダム・リナールト」、今年のアンダムで特別賞を受賞したパリベースのオランダ人デザイナーによるアップサイクリング 「デュラン・ランティンク」の初参加2ブランドがそれぞれオープニングとクローズを飾る。
全体で108ブランドが参加。うち67がショーでコレクションを発表する公式カレンダーを見ると、パリの華やかな多様性を感じずにはいられない。フランスからは「ピエール・カルダン」「メゾン・マルジェラ」、新クリエイティブディレクターにルイーズ・トロッターを迎えた「カルヴェン」、「ミュグレー」、老舗「エーグル」らのカムバック組、そして「カサブランカ」が加わる。グローバルでは「ヴィクトリア・ベッカム」「ヴァレンティノ」「ザ・ロウ」。「マルニ」は初めてパリでショーを開く。
若手ではロンドンを拠点にするデザイナーの「キコ・コスタディノフ」が、パリ・メンズコレクションに続きレディスで初参加。アシックスがこの秋発売する「ノヴァリス」のデザイナーとしても知名度を上げている。
パリ・メンズコレクションでファレル・ウィリアムスの初コレクションをスペクタクルに披露した「ルイ・ヴィトン」は、その勢いを10月2日のニコラ・ジェスキエールによるショーへとつなぐ。会場はメゾンの歴史における新しいチャプター、近い将来店舗となるシャンゼリゼの一角だ。
また今回のウィークを最後に新しい章へと旅立つデザイナーもいる。「アレキサンダー・マックイーン」のクリエイティブディレクター、サラ・バートンは30日のショーを最後に退任する。
(パリ=松井孝予通信員)