ファッション業界の採用は、販売職を中心に全体的に売り手市場が続いている。以前ほどではないようだが、「高い水準で高止まりしている」状況だ。採用の早期化の一方で、学生の「納得して」などの内定保留や辞退などで長期化している傾向もある。ファッション・アパレル業界に特化した人材関連サポート企業に、採用・就活活動の現状を聞いた。
内定保留したまま就活
――26年春卒と27年春卒の採用活動の状況は。
FB(ファッションビジネス)業界では、店頭要員の採用難が続いています。計画未達分を翌年に繰り越しているのと、戦力になる20代後半の退職者が目立つため、26年卒も採用は増加傾向でした。一方、27年卒は出店を減らす企業や、初任給を上げる企業が増えて離職率の上昇傾向が改善し、採用の増加が少し落ち着きました。当社主催の勉強会に参加する企業では、販売職の採用を前年より増やした企業が、26年卒の半数以上から、27年卒は半数以下にやや鈍化。総合職と専門職では27年卒は「前年より増やす」との回答が増え、必要人員を精査して採用する流れが強まっています。
27年卒は他業界の影響もありFB業界でも、企業が早めに学生と接点を作ろうとする動きが加速。大手は昨年夏から、中堅も昨秋から、インターンシップ(就業体験)やオープンカンパニーなどプレ採用活動を開始。昨年12月までに内々定を出す企業も増えています。
先ほどの勉強会参加企業に、プレ採用活動について聞いたところ、「3月より前に内々定を出した」との回答が、総合職では前年比11%増の58%、販売職は19%増の40%に上昇。6月末までに学生の8割が内定を持ち、そのうち何割かは保留したまま就活を継続中です。販売職の場合、総合職志望で販売職での内定を保留する人が多く、大手でも計画通り確保することは難しく、大半の企業が年内は採用を続けています。早期化と長期化が進み、27年卒の採用と内定者フォロー、28年卒の採用を平行して行う企業も目立ちます。
専門職は採用試験の時期が遅く、7月末から8月に内定を出す企業が多かったのですが、他業界との競合を考慮して内定出しの集中期が5月中旬から6月中旬に変化しています。
応募数は減少傾向
――3月のFB就職セミナーの結果は。
東京は38社、大阪は22社と前年並みの企業が出展し、学生は東京が前年比並みの600人弱、大阪が1割増の220人が来場しました。学内セミナーや合同企業説明会などリアルな採用イベントに参加し、学生との接点を増やしたい企業は多い半面、学生は個別企業説明会への申し込みを1ケタ台に絞り、ピンポイントで就活する人が増えています。

企業側は応募者が減り、母集団が多いと2割減少。新卒の販売員不足を補うため、中途や派遣、アルバイト、高卒採用を増やす企業が多いです。若年人口も減少するなか、人事以外の現場のマネジャーやスタッフが選考や説明会に携わる事例が増加。今いる人を大切にして定着率を上げたり、採用の予算や人員体制を強化しないと数年後、さらに採用は厳しくなりそうです。
――学生の意識の変化は。
売り手市場で熱量や質が低下しています。オンライン併用の説明会だと対面での参加に消極的で、AI(人工知能)をエントリーシートや面接の回答作成に使う学生が増えている。AI対策で自己紹介動画を送らせる企業もあり、エントリーシート廃止やリアルな対面の選考を増やすなど、採用方法が変わるかもしれません。面接前に企業情報や店舗を見て予習しない学生や、選考を無断欠席する人も目立ち、内定は保留が普通です。
――28、29年春卒の採用活動の見通しは。
訪日外国人需要の増加も背景に、靴やアウトドア、スポーツ各社が路面店やファッションビル、モールへ出店を拡大中です。今は中途や派遣、アルバイトで店頭販売を補う企業が多く、FB業界からの転職者も増加中です。今後、新卒採用の増加が見込まれ、さらなる競合激化が予測されます。
――FB業界への提言を。
20代以下の社員で自らの道筋が見えず離職する人が増え、20代と30代前半に穴が開き、ベテランと新人しかいない企業が多いです。事業計画を定期的に示すように、社内向けにも時代の変化に応じた社の方針と、どう成長し、どう貢献してほしいかを個々人に発信すべき。人は財産。採って終わりでなく、企業内で各自が能力を高め成長し、キャリア形成できる環境を整えることが大切だと思います。
(繊研新聞本紙26年7月22日付)
