この連載では、デザインやもの作りのインスピレーション源となるような、知る人ぞ知る服飾系ミュージアムを紹介します。
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東京・浅草アミューズミュージアム
ファッションの原点が詰まった圧巻の〝ボロ〟コレクション
東京・浅草に国内外から多くのファッション、テキスタイル関係者が訪れる場所がある。総合エンターテインメント企業のアミューズが運営するアミューズミュージアムだ。「日本文化をエンターテインメントにしたい」と09年に開設。日本の布文化を紹介する展示室では、古布を中心に民俗学者の田中忠三郎が収集した貴重なコレクションを紹介している。
触って感じる
所蔵する田中氏のコレクションは、国の重要文化財に指定されている786点を含めて約3万点。そのうち、常時1500点を展示している。古布を意味する〝BORO〟(ボロ)と題された第一展示室には、青森の農村を中心に東北で実際に使われていた布がずらり。野良着からかいまき布団、足袋、大人用のおむつまで、さまざまなアイテムが並ぶ。
ボロというタイトル通り、どれも布を継ぎはぎして大切に使われてきた物ばかりだ。綿花の育たない寒冷地のため、麻を育てて使っていた昔の人々にとって、布は非常に貴重な物だったという。例えば、お産の時に使われた「ボド」と呼ばれる敷布は、祖父母が使っていた布を使うのが習わしとされ、何世代にも渡り大切に使い続けられた。どういう風に作られ、使われていたのか。布のストーリーを感じることができるのが面白い。展示品は基本的に触ることができ、触覚を通して布文化を感じられる点も同ミュージアムのだいご味だ。
展示品を見ていると、ただ継ぎはぎされているのではなく、柄がシンメトリーになるようにデザインされていることに気付く。「自分を少しでも良く見せておしゃれをしたいと思うのは、当時も今も変わらない。このコレクションを見れば、ファッションの原点を感じることができるはずです」と辰巳清館長。
思いを集める
第二展示室では布だけでなく、さまざまな民具を展示。アザラシと鮭の皮を縫い合わせたブーツや一面に刺し子が施された消防服、雨具や時計のほか、縄文土器、弥生土器など歴史的価値の高い物も間近で見ることができる。
田中氏が提供した黒澤明監督の映画「夢」の衣装が並ぶのは、第三展示室。カラフルな菱刺し前掛けは、見ているだけで楽しい。
第四展示室では現在、特別展「布の絵画BORO~美しいぼろ布展~」を開催中だ。島根や京都、青森など、さまざまな地域の〝ボロ〟を展示している。一枚の布がどうしてこうも魅力的なのか。「何代にも渡って継承され、人の想いを集め続けてきた強さがあるからだと思います」と辰巳さん。
館内には週替わりで作家を紹介するギャラリーや浮世絵シアターも併設。1階には全国の工芸品を集めたセレクトショップを設置し、世界中から人が集まるスポットとなっている。
■データ■
住所=東京都台東区浅草2の34の3
電話=03・5806・1181
開館時間=10~18時
定休日=月曜日(祝日の場合は翌日)
入館料=一般1000円、大・高校生800円、中・小学生500円