架空の百貨店インショップ「ルクリア」の店長、麻紀の成長の物語。副店長の美穂、先輩でスーパーバイザーの瞳、百貨店フロアマネージャーの大谷さんが登場するこのストーリーは、前回幕を開けたばかりです。
早速ですが、麻紀が何かに頭を悩ませているようで…
(作:松井柚子、画:住田葉子、監修:武永昭光ショーアンドテル代表)
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来月は、フロア全体でファッショントレンドの「マスキュリン」をテーマにして各ショップがそれにあてはまる商品を打ち出すことになっている。大谷マネジャーの方針は、いつも共通のテーマを設定し、各ショップでさらに細かいテーマの設定をさせていた。今回の会議ではそれを発表するのだ。
「もしもし、麻紀です。お疲れ様です。」
「お疲れ様。どうしたの?」
「明日、店長会議なんですけど、テーマのことを瞳さんに相談したくて…」
「毎月毎月大変ね。計画性があることは良いことだけど、ついていくのにやっとよね」
「毎回面倒なんですけど、確かにテーマを決めて打ち出すようにすると、その商品が売れるから何も言えないです」(笑)
「そうね。視認性が高い商品の在庫が多ければ、売り上げは上がるものね。他の店舗もまねさせてもらって効果があるから、結局大谷マネジャーのおかげなのよね」
来月のテーマはファッショントレンドの「マスキュリン」だが、ルクリアには該当する商品がない。ない場合は代わりのテーマを設定することになっている。麻紀は「秋らしい通勤着」にしようと考えていた。
瞳が言う。
「うん、『秋らしい通勤着』、いいと思うわ。ちょうど、来月の頭に伸縮性のある素材のジャケットが発売されるの。それが雑誌でも紹介されるのよ。だから、第2テーマは『伸縮性のある素材のジャケット』はどう?」
「わかりました。さらに細かいテーマはどうしたらいいでしょう? コーディネートがいいと思うんですけど…」
「じゃあ『マーメイドスカートとのコーディネート』はどうかな。そのコーディネートで雑誌に載るから」
「そうですね。それなら在庫も十分ありますし、売り上げアップにつながりそうです!」
こうしてルクリアの来月のテーマが決まった。メーンテーマは「秋らしい通勤着」、さらに細かいテーマは「伸縮性のある素材のジャケット」、そしてさらに細かいテーマは「マーメイドスカートとのコーディネート」だ。それをボディーに着せたりPOP(店頭広告)で紹介したり、お客様の目につくように展開する。
「ありがとうございます! やっぱり瞳さんは頼りになります!」
「私に相談しなくても一人でできるように努力しなさいよ(笑)。今週末そっちに行くから、会議の話聞かせてもらうわね」
百貨店や専門店ビルなど大型商業施設に入店していると、全体としての統一性を重視し、VMDなどの指針を示されることがあるが、品揃え面で無理な場合は、ショップとして独自のテーマを打ち出し、品揃えの一部を伝えることが必要だ。
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※この物語はフィクションです。実際のショップ、人物とは一切関係ありません。
(繊研新聞2013年に販売・リテイリスト支援のぺージに掲載されたものを元に編集しています)