アパレルの物作り新戦略⑤ フィールズインター

2018/09/17 06:25 更新


 ワールドグループ、フィールズインターナショナルの主力ブランド「アンタイトル」は原料生産地までさかのぼった物作りを追求する。16年秋冬から始めた「ピュアシリーズ」はシーズンごとに、カシミヤやコットン、ウール、シルクなど上質な原料による物作りでブランドの価値を高めてきた。「原料からの持続可能な生産基盤を支援するとともに、最終製品におけるトレーサビリティー(履歴管理)を示すことで、消費者から共感を得ることを重視してきた」と強調する。

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原料含めた継続

 「物作りの空洞化、弱体化への危機意識が非常にある」。福井淳社長は、そう話す。「これまで上質な物作りに活用していた生産基盤が国内外で失われている」と嘆く。それだけに「当社のようなミドルからアッパーゾーンの価格帯の服を扱うアパレル業態は、原料を含めての物作りをいかにして継続させるかを考えることが、今や企業としての社会的責任の範疇(はんちゅう)に入る」と考えている。

 この間、取り組んできたスビン綿を生かしたピュアコットンシリーズは、その象徴と言える。スビン綿はインド産の希少な原綿の一つ。細く長い繊細な綿はシルキーな光沢感が特徴で、高額だが差別化の決め手になる。最近、このスビン綿の栽培とジニング(綿のわたと種を分離する工程)を手掛ける、アパッチ・エコロジック・コットンと複数年にわたる継続的な取引契約を結んだ。スビン綿は栽培が難しく、原綿生産者との直接取引は、消費者に対するトレーサビリティーを示すことにもなる。「物作りの在り方について、アパレルメーカーとして受け身であってはならない。アパレルの価値を創出する源は原料にある。これらの生産背景を持続させる活動を、能動的に行わなければならない」と言う。

自分たちで循環

 環境保護への意識の重要性も強調する。「服を着終えた後の環境問題についても、考えなければならない時代になっている。当社は『ワールド・エコロモキャンペーン』を通じて衣料品を回収する活動を行い、自分たちのできる範囲での循環サイクルを作ろうとしている」と強調する。

 〝物作り〟は作ったら終わりではない。回収にまで責任を持つことがメーカーとしての社会的責任になる。「企業活動や企業姿勢が、消費者の購買動機を決定付ける重要な要素になっている」と言い切る。

 ファッションビジネスの世界で、エコロジーやサステイナブル(持続可能)に配慮し、そうした価値観を企業運営の重点に据えることが当たり前になってきた。

「アンタイトル」のピュアシリーズは上質な原料による物作りを追求する

(繊研新聞本紙7月30日付けから)



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