《東京ブランド新世代》「ノリコナカザト」デザイナー 中里周子さん
ファッションのシステム自体を作りたい
目指すのは〝不真面目の美学〟
国内外で、新世代デザイナーの台頭が目立っている。見る人に、「これってファッションなの?」と考えさせてしまうようなパワフルな表現を持ち味とする中里周子も、東京の新世代を代表する一人だ。現役の東京藝術大学院生という肩書きも武器に、ファッションとアートなどの分野を軽やかに行き来して、新しい〝何か〟を生み出そうとしている。
◆服のない展示会
15年秋、クルーズコレクションの展示会場を訪ねると、そこに服は1着もなかった。代わりに見せられたのは、バーチャルリアリティー(VR)の海の映像。言われるがままに映像を操作すると、海の中から遺跡が出現し、そこにチラリと服の画像も混じっている。帰り際に渡されたQRコードにアクセスすると、商品の販売サイトにつながるという仕掛けだった。実物の服を見るつもりで出掛けた身としては、正直呆気に取られた。
15年年末~16年1月上旬は、伊勢丹新宿本店の「トーキョー解放区」で、中里プロデュースの催事を行った。「未来の百貨店」というコンセプトのもと、アイドルグループ「乃木坂46」のメンバーが登場する宇宙旅行のVR映像を制作。
売り場を3016年の伊勢丹宇宙支店と設定し、宇宙服をイメージしたジャンプスーツや惑星柄のスカーフ、地層のようなお菓子、地形のジオラマなどを販売した。JAXA(宇宙航空研究開発機構)やエジプト考古学者の吉村作治さん、大手旅行代理店なども巻き込んだ、お祭りのようなイベントだった。